コラム

「何を撮るかでさえ重要ではない」と、豪州の強烈な陽光の下で

2016年10月26日(水)16時25分

From Markus Andersen @markusxandersen

<シドニーで光と影のコントラストをドキュメントする写真家、マーカス・アンダーセン。カメラは単なる道具に過ぎないと、彼は訴える>

 オーストラリア最大の都市であるシドニーは、ほぼ1年中、晴天に恵まれている。澄み切った空から降り注ぐその陽光は、極めてきつい。適度な気温のため、その強さをつい忘れてしまいがちだが、たやすく肌を焼け焦がすほどだ。

 同時にそれは、巨大なビル群を孕む"大都会性"と、複雑に入りくんだリアス式海岸沿いに続く街並みと絡み合って、光と陰の強烈なコントラストを生み出す。今回紹介する38歳のマーカス・アンダーセンは、そんなシドニーで生まれ育ち、光と陰を自らのカメラアイでドキュメントしている写真家だ。

 光と陰が作り出す世界は、一種の陶酔だとアンダーセンは言う。無論それは、太陽が直接的に作り出す、単なる眩さと気だるさのせいだけではない。シドニーの強烈な光によって作られる陰が、そのハイコントラストの交錯が――彼の言葉を借りれば――時として日常のありふれた瞬間を、予期せぬ非現実的な世界へと誘ってくれるからだ。

 作品は、光と陰をドラマチックに扱っているだけではない。アンダーセンの作品の主題は、大都会シドニーに住む人間である。しばしば人間は、太陽に幻惑されながら巨大な闇という峡谷に突き進んでいくように、あるいはその一部の生き物であるかのように描写されている。それは、発展と消費文化に対するアイロニー的なメッセージでもある。

OF. Sydney. Australia. Leica MP / 28mm / ILford HP5

Markus Andersenさん(@markusxandersen)が投稿した写真 -

Unpublished image from my book: "Rage Against The Light". Purchase via link @markusxandersen

Markus Andersenさん(@markusxandersen)が投稿した写真 -

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電

ワールド

中国、海南島で自由貿易実験開始 中堅国並み1130

ワールド

米主要産油3州、第4四半期の石油・ガス生産量は横ば

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story