コラム

経歴詐称のサントス議員を辞めさせられない共和党

2023年01月25日(水)14時00分

サントス下院議員の経歴のほとんどがウソだった Jonathan Ernst-REUTERS

<与野党が拮抗する下院で、共和党は「1議席」も失いたくない>

今月、初登院した連邦下院の新人、ジョージ・サントス議員(共和党、ニューヨーク3区選出)に関しては、昨年11月の中間選挙で当選した前後から経歴詐称の疑惑が取り沙汰されていました。とにかく、その「ウソ」が膨大であり、サントス議員に関しては経歴のほとんどが虚偽であったと言っても過言ではないと思います。主要なものだけでも、

「ユダヤ系でホロコースト被害者の子孫」(ウソ、本当はブラジル系でカトリック)
「名門進学高校に在籍、その後大学進学して卒業、更にニューヨーク大学でMBA取得」(全てウソ)
「シティバンク、ゴールドマン・サックス証券に勤務」(どちらもウソ)
「自分はガンに罹患したが生還」(ウソ)
「母親(故人)が9.11テロに遭うも奇跡的に生存」(ウソ、本当はその時点で母親はブラジルで生活)

といった詐称が報じられています。なお、本稿の時点では連邦下院の公式サイトからリンクされている議員の紹介欄では、怪しい経歴は全て削除されています。

連日報じられるスキャンダル

1月に入って議会が開会されると、さらに様々な疑惑が報じられるようになって来ました。

「動物愛護の基金を偽名で主宰していたが、そのカネをネコババしていた」
「ブラジル時代に女装のチャンピオンだった」
「ゲイと公言して同性婚していながら、女性と重婚していた」
「選挙区に居住していなかった」

この4つのストーリーについては、サントス議員自身には何らかの言い分があるようですが、いずれにしても、ニューヨークのメディアでは連日のように「サントス議員のスキャンダル」に関して大きく報道しています。

そのサントス議員に関しては、ライバルの民主党の議員団からは、即時議員辞職の声が大きくなっています。また国外逃亡の可能性があるので、パスポートを無効にすべきといった主張もあります。

同僚である、ニューヨーク州選出の共和党下院議員の多くも、サントス議員の辞職を要求しています。近所の選挙区でここまで激しいスキャンダルがあると、同じ共和党の自分にまで悪評が起きてしまい、次の2024年11月(残り1年10カ月しかありません)の下院全員改選の選挙が危なくなるからです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国防権限法、トランプ氏署名で成立 過去最大の90

ワールド

米当局、ブラウン大銃撃の容疑者特定 MIT教授殺害

ビジネス

ソニーG、スヌーピーのピーナッツHD持ち分を追加取

ワールド

金価格、来年4900ドルに上昇へ 銅値固め・原油は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story