コラム

なぜ今になって英語の民間試験導入に反発が出ているのか?

2019年09月26日(木)17時10分

先述の通り本来はTOEFL一択でいいとは思いますが、「大人の事情」の結果、多くの国内の企業が新たに作った試験も選択肢として認められています。こちらは、「点が取りやすい」とか「有利になる」などという謳い文句とともに、セールス活動がされている(おかしな話です)ようですが、その検査そのものが「日本の受験生にも点が出やすいように」つまり「ホンモノの言語運用能力ではなく、試験対策なるものが通用する」ような内容に歪められているかどうかは、しっかり監視しなければならないと思います。

それはともかくとして、実施直前のこのタイミングでこれだけの「不安感」が噴出してきたということを見ると、そのこと自体に1つの大きな不安を感じざるを得ません。

それは「民間試験導入が分かっていたにも関わらず、旧態依然とした英語教育を抜本的に変革することが間に合わず、聞くとか話すといった技能について、高校生自身も、また指導した高校教師も全く自信が持てていない」という不安です。

そうだとすれば、試験に対する不安感や反発というのは、日本の学校現場における英語教育が「変わらなくてはならないが変われない」という状況を抱えて混乱していることのあらわれ――そう理解することができます。仮にそうだとすれば、決していい状況ではありませんが、とにかく新しい制度が「変らなくてはならない」という現実を突き付けているのは事実でしょう。現在の混乱はそのように理解できると考えられます。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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