コラム

トランプ勝利会見に寄り添うクリスティー知事の深謀とは

2016年03月03日(木)20時00分

 ニクソンの先例も考えておく必要があります。あの時のアグニュー副大統領更迭劇はスキャンダルへの関与という事情があったという要素もありますが、つまり大統領をクビにする場合は、その大統領が選んだのでは「ない」第三者的な人物を次期大統領含みの副大統領に変えておくという「先例」があるわけです。ですから、トランプがクビになった時の自動昇格に期待するのは甘いと言わざるを得ません。

 クリスティーの考えていることは、もっと違うところにあるのでしょう。それは、「トランプ現象」を引き起こしている「現状への不満」を抱えた中高年保守層の票を、しっかり取り込んでおこうという深謀遠慮です。右派ポピュリストとしての人心掌握術としては、ツボにはまれば良くも悪くも才能を発揮する人物ですし、そうして4年後を狙う作戦と見ておいた方が筋が通ります。

 もしかすると、ここでトランプを支持して、トランプ支持者に好印象を与えておけば、実際の選挙でヒラリー政権の誕生を許しても、4年後には「チャンス」がある――そんな計算をしているのかもしれません。この政治家にとっては、「4年後にヒラリー政権を倒して本格保守政権を作り、8年を走り切る」というのが、最大の野望シナリオではないかと思えます。

 全国中継で延々と映し出された「硬い表情」のウラには深い計算がありそうです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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