最新記事
シリーズ日本再発見

日本に観光に来た外国人がどこで何をしているか、ビッグデータが明かします

2016年08月19日(金)11時12分
西山 亨

 企業が活用できる「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」のサービスは、もう1種類ある。訪日外国人ユーザーがWi-Fi環境をアップグレードできる"プレミアムコード"の配布だ。これは訪日外国人ユーザーにとっても反響が大きいという。

 実は、ワイヤ・アンド・ワイヤレスは全国に20万のアクセスポイントを整備しているが、「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」のアプリをダウンロードした時点では6万スポットしか利用できない。そこで、すべてのアクセスポイントを利用できるプレミアムコードを企業に購入してもらう。例えば、小売企業が外国人に自分の店に来てもらいたいとき、店の近くにいる訪日外国人ユーザーに向けて「来店の方にプレミアムコードを進呈」といったメッセージを盛り込んでプッシュ配信。これにより、より快適なWi-Fi環境を求める外国人が来店してくれるというわけだ。

「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」は2014年12月にスタートしているが、アプリは累計150万以上(2016年3月末時点)ダウンロードされ、訪日外国人が最も多く利用しているWi-Fiサービスとなっているという。

中小企業や個人商店が利用できるサービスも

「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」が自治体や大企業向けであるのに対して、ワイヤ・アンド・ワイヤレスが2015年12月にリリースした「インバウンドサテライト」は、中小企業向けともいえるサービスだ。

 メニューは2つあり、1つ目の「インバウンドレーダー」は、地図上で自分の店がある場所と、それに関連する3つの場所(最寄駅や近くのランドマークなど)を設定できる。それらの場所を訪れた訪日外国人(「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」のユーザー)がどれくらいいたかを、国籍や曜日、時間帯別でも表示してくれる。

「例えば、台湾の人が多ければ店には繁体字の案内を掲示するとか、最寄駅には多数の外国人が訪れているのに自分の店の周辺にはまったく訪れていなかった場合、誘導する方法を考えるとか、インバウンド対策に利用していただいています」と、南さんが活用法を教えてくれた。

japan160819-4.jpg

「インバウンドキャッチャー」の設定画面。コンテンツを配信するターゲット、配信内容、集客場所の3項目を設定するだけで操作が完了

 もう1つの「インバウンドキャッチャー」は今年6月から追加した新機能で、訪日外国人を呼び込むための情報発信機能とのこと。例えば、自分の店が代官山にあり、近くの恵比寿駅周辺を訪れる多数の訪日外国人を呼び込みたいときに、店舗情報やクーポンなどのコンテンツを配信できる。「インバウンドレーダー」も「インバウンドキャッチャー」も、「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」の機能を簡略化したもので、利用金額をリーズナブルに設定しているため、個人商店でも無理なく利用できる点が特長となっている。

 こうしたサービスが活況を呈し、ビッグデータにより、訪日外国人の動向は解明されつつある。しかし、インバウンドビジネスでの収益を高めるには、これらをどう使いこなし、どう効果的な施策を打っていくかという次なるステップが重要だ。それができてこそ、日本のおもてなしも発揮されるのではないだろうか。


japan_banner500-2.jpg

japan_banner500.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、賃金やサービスインフレを注視=シュナーベル

ビジネス

焦点:連休中の為替介入警戒、取引減で再動意も 米当

ビジネス

LSEG、第1四半期決算は市場予想と一致 MSとの

ワールド

北朝鮮製武器輸送したロシア船、中国の港に停泊 衛星
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中