コラム

一足早く「原油離れ」していた株式市場...停戦で米国経済はリスクが減ったが、日本はどうか

2026年04月08日(水)17時40分

ホルムズ海峡の航行正常化は楽観できない

そして米東部時間4月7日の夜(日本時間8日の朝)、トランプ大統領は、2週間の停戦に合意したと述べた。この展開は3月中旬時点での市場のコンセンサスであり、株式市場は3月末の大底を見て停戦を一足早く予見していたとも言えるだろう。

ただし停戦合意に至っても、ホルムズ海峡の航行が正常化するかどうかについては楽観できない。完全に元に戻るには時間を要する展開も考えられる。

中東にエネルギー資源をほとんど頼っていない米国としては、イラン戦争が泥沼化するシナリオさえ回避されれば、ホルムズ海峡封鎖解除が遅れても自国経済にとっては問題が小さい、と考えるだろう。このため、日本を含むアジア諸国の経済活動に影響が及ぶリスクは今後も残る。

これまでの株式市場の値動きが正しかったとしても、今回のイラン戦争によって、原油資源を中東諸国に依存している日本経済の脆弱性が露呈した。

イスラエルからの働きかけが大きかったとはいえ、国際秩序を自ら壊して米国が戦争を始めたことは、2022年のロシアによるウクライナ侵攻とともに、冷戦後の平和な時代が終焉したことを示している。

高市早苗首相のリーダーシップの下、政府はナフサなどのエネルギー関連資源の確保に努めており、他のアジア諸国よりも原油ショックに耐えられる時間が長い。

それでも、国際情勢が不安定化しても経済活動を継続するためには、石油資源の調達先の多様化だけでなく、石油資源への依存を減らしながら、原発再稼働や再生可能エネルギーの拡大などで電力供給余力を高めることが、経済安全保障の観点からも今後重要になるだろう。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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