コラム

彼女こそ米国の光...テイラー・スウィフトをブリトニーと間違えたのは、バイデンの致命傷になりかねない

2023年11月28日(火)18時28分
テイラー・スウィフト

Brian Friedman/Shutterstock

<81歳のバイデンが間違うのも仕方がないが、大統領選に向けて笑い話では済まないほどの影響力がテイラー・スウィフトにはある>

[ロンドン発]来年の米大統領選で再選を目指すジョー・バイデン氏は81歳の誕生日と重なった11月20日、ホワイトハウスで七面鳥に恩赦を与える毎年恒例の感謝祭行事に出席した。米大統領の最高齢記録を更新し続けるバイデン氏は自身と民主党を支持する国民的歌手テイラー・スウィフトをブリトニー・スピアーズと間違えた。

自叙伝『The Woman in Me』でスキャンダラスな過去を赤裸々と綴ったブリトニーはイラク戦争で「ジョージ・W・ブッシュ大統領(共和党)のすべての決断を信頼し、支持している」と無条件の忠誠を示した。しかしバラク・オバマ大統領(民主党)とウクライナの民主化を呼びかけ、20年にはインスタグラムで富の再配分を求め、共和党支持者から突き上げられた。

バイデン氏は「知っておいてほしいのだが、60歳になるのは難しい。実に難しい。この行事は今年で76回目を迎えるが、 私は最初の行事には参加できなかった。まだ生まれていなかったからね」とユーモアを交え、「七面鳥がここにたどり着くまでに厳しい競争に打ち勝たなければならなかった」と話した。そのあと間違いが飛び出した。

「(ビヨンセの)ルネサンス・ワールドツアーやブリトニー(実はテイラーのこと)のツアーのチケットを手に入れるよりも難しいとさえ言える。 彼女は暖かいブラジルにいる」と言い間違えた。ブラジルではテイラーのコンサートを楽しんでいた観客が猛暑のため死亡する事件が起きている。

バイデン氏は移動の際の転倒や言い間違いをたびたび報じられている。米紙ニューヨーク・タイムズ(11月5日付)に掲載された世論調査(対象は登録有権者3662人)では71%が「バイデン氏は有能な大統領になるには年を取りすぎている」と回答。バイデン氏の支持者でさえ54%がそう考えていた。

テイラーほど米国の心をつかんだ歌手はいない

バイデン氏の言い間違いは日常茶飯事だが、大統領選で勝ちたいのならこの取り違えは命取りだ。23年、テイラーほど米国の心をつかんだ歌手はいない。彼女のライブコンサートを映画化した『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』は全米で1億1000万ドル、世界中で1億4000万ドルの興行収入を上げ、コンサート映画では史上最大の成功を収めた。

製作費わずか1500万ドル。テイラーは巨大ハリウッドスタジオの配給網を避け、映画館チェーンと直接取引することを選ぶ商業的才覚を発揮した。アルバム総販売数は453万1000枚、全米で売れたアルバムの5.4%を占めた。2位の韓国男性アイドルグループ、ストレイ・キッズは75万3000枚で、テイラーはその6倍というお化けぶりである。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:中国の再利用型無人宇宙船、軍事転用に警戒

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story