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愛国化する世界──蓮舫氏の二重国籍とフランスの「国籍と名前」論争
残念なのは国籍とアイデンティティーをめぐる蓮舫氏の発言が二転三転し、その場しのぎにしか聞こえなかったことだ。国民主権、基本的人権の尊重といった憲法の基本原則に基づいて定められた国籍法や公選法は、「排除」の論理ではなく、ほんの少しだけれど「包摂」の窓を開いている。09年時点の日本の総人口1億2751万人のうち外国人登録者数は218万6121人(全体の1.7%)。単純に差し引きすると日本国籍者は1億2532万人。重国籍者が58万人なら日本国籍者のわずか0.46%である。
蓮舫氏が真の政治家なら0.46%に過ぎない日本人の多様性の風通しを良くしたいと、台湾と日本にまたがる自分のアイデンティティーを肯定的に主張できたはずだ。「二重国籍」は国内的には憲法の基本原則に基づき「包摂」という観点から論じられるべき問題だ。しかし対外的には外交・安全保障上、他国に付け込まれる恐れが完全には否定できない。蓮舫氏の「台湾籍から離脱している」という最初の説明が本当なら何の問題もなかったが、保守系メディアに見事に搦めとられてしまった。蓮舫氏のいい加減な対応が日本人の要件を一段と厳格に規定する結果をもたらすとしたら、彼女自身の「二重国籍」問題より、そちらの方が影響は深刻だ。
フランス名でなければフランス人にあらず
日本だけでなく、今、世界中が愛国化している。フランス革命後、「自由、平等、友愛」という普遍的な価値と「開かれたナショナリズム」を打ち立てたフランスで、こんな論争が起きている。移民を「人口学的な津波」と表現するなど度々、物議をかもしてきたフランスの作家エリック・ゼムール氏(58)が「フランス国籍者の名前はフランスの聖人カレンダーの中から選ぶという法律を復活させるべきだ」と主張した。
極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首をも「十分に右ではない」と批判するゼムール氏が標的にしたのはサルコジ大統領時代に司法相を務めたラシダ・ダディ女史(51)だ。09年1月に第1子の女児を出産したが、父親が誰かは明らかにされていない。TVで「インフラチォン(インフレのフランス語)」を「フェラチォン」と言い間違えて話題をまくなど、その言動は十分にフランス的過ぎると思うのだが、ゼムール氏の目にはそうは映らない。
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