コラム

英国がEUを離脱する確率は、トランプ氏が米大統領選の指名候補になるぐらいある?

2016年02月05日(金)16時30分

イギリスのトランプ?──EU離脱と移民規制を掲げて昨年発足した英独立党(UKIP)のファラージ党首 Toby Melville-REUTERS

 英国は欧州連合(EU)から離脱するのだろうか。EU残留・離脱を問う英国の国民投票が6月にも行われる見通しが一段と強まってきた。2月2日、EU大統領のトゥスクが英国の求めるEU改革案に対する回答を示した。新しくやってくる移民の社会保障のただ乗りを防ぐ方策やEUの立法に対する異議申し立てなどが柱となっている。同月18、19の両日開かれるEU首脳会議で加盟国の合意が得られるかが次の山場だ。

 英国の歴史を振り返ると、欧州に対する懐疑論は常にくすぶってきた。伝染病の流行、戦争と災いは欧州大陸からやってくると島国の英国は本能的に反応してしまうようだ。その反面で、小さな英国に閉じ籠っていても成長も繁栄もないと欧州大陸に未来を見出そうとする人たちも決して少なくない。米国の陰りとともに「欧州大陸より大切なのは米国だ」と大西洋関係を重視する人がめっきり少なくなる中で、英国はいったいどこに向かおうとしているのか。

【参考記事】EU離脱か残留か、今もさまよう「忠誠心の衝突」

 EU残留を望んでいるのに、保守党内の欧州懐疑派やEU離脱を党是に掲げる英国独立党(UKIP)の台頭に対応するため、パントマイムを演じてきた英首相キャメロン、それに渋々合わせてきたEU首脳の発言を聞いても、その答えは見つからない。しかし米大統領選の民主、共和各党の候補者選びを見て、はっきりした。米民主党上院議員サンダースのイメージは強硬左派の英労働党党首コービンとだぶっているし、米共和党のトリックスター、トランプは「道化師」に称されるファラージUKIP党首とそっくりそのままだ。

 これまで英国の欧州懐疑派について、英国伝統の「議会主権」を損なうからだという解説がなされることもあった。英国の下院議員はEU本部があるブリュッセルに意思決定の権限を奪われることに反対してきた。しかし、欧州懐疑派の英大衆紙デーリー・メールや保守系の英高級紙デーリー・テレグラフの紙面を見ると、今回の問題の本質が移民問題であることがわかる。

 ロンドンの建設現場で働く友人がよく「ポーランドから出稼ぎに来た労働者ときたら俺よりデカい家を故郷に建てて、英国政府からもらった3人分の育児手当を仕送りしてやがる。子供はポーランドに住んでいるのに、どうして俺たちの税金で面倒を見てやらなければならないのか」と不満をぶちまける。これが偽らざる英国の庶民感情だ。労働党党首コービンも党内世論に配慮してEU離脱こそ公言しないものの、EU残留キャンペーンについても態度を保留している。反グローバル主義者のコービンは心の奥底ではEU統合は英国の労働者から仕事を奪っていると考えているのだろう。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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