コラム

投資家は「東京メトロ」をどう見るべきか...「今さら」上場になった特殊な理由と、今後の注目点とは?

2024年11月14日(木)17時09分

最適な上場タイミングをつかめなかった特殊な事情

本来なら民営化のタイミングで上場が行われてもよさそうなものだが、東京メトロには少し特殊な事情があった。

同社の株式は政府と東京都が約半分ずつ所有しているが、都営地下鉄との一元化を望む東京都と調整がつかず、最適な上場タイミングをつかめなかった。当該問題はまだ解決していないが、政府が東日本大震災の復興財源の確保の必要に迫られたことなどから、今回、上場が決まった。

政府と東京都は上場に際して約半分の株式を放出しており、政府は1800億円の売却益を復興債の返済に充当する。政府としては取りあえず株式の売却に成功し、一息ついた状態だが、政府が売った株を購入した一般投資家からすれば、同社が今後も成長を続け、株価が上昇してもわらないと困る。


公営事業の期間が長かったこともあり、同社はいわゆる事業の多角化は進めておらず、売上高の9割以上を鉄道事業が稼ぎ出している。また地上に路線を持つ私鉄各社と異なり、大量の土地を所有しているわけではないので、不動産を中心としたビジネスも他社のようには進めにくい。

当面、首都圏への人口流入が予想されるものの、総人口の減少が進めば、いずれ首都圏の人口も減少に転じるタイミングがやって来る。一方で、目先の鉄道事業における収益力は他社を圧倒しており、しばらくの間は安定的に利益を確保できる企業であることは明白だ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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