コラム

「資本主義では豊かになれない」と感じる人が増え続ける今...世界経済が「中世」に逆戻りする可能性

2024年03月06日(水)20時15分
暗い時代へ進む世界経済

TIM GRIST PHOTOGRAPHY/GETTY IMAGES

<資本主義と民主主義を拡大する流れで発展してきた国際社会だが、現在は各国でこれに逆行する出来事が相次いでいる>

このところ、資本主義や民主主義といった、いわゆる近代的システムがうまく機能しなくなっていると懸念する声をよく耳にする。長期的な時代の変化というのは、後になってみなければ分からないものであり、短期的に結論を下すことは避けたほうがよい。

だが、近代的枠組みが大きく揺らいでいるのは間違いなく、そうした視点での議論も必要となってくるだろう。

過去100年の国際社会は、近代国家の枠組みを軸に資本主義と民主主義を拡大する流れで発展してきた。国ごとに程度の違いはあるにせよ、大きな方向性としては効率のいいグローバル市場の追求と、世界共通の理念として人権を担保する方向性が模索された。だが近年、一連の流れと逆行する出来事が相次いでいる。

欧米社会とは基本的価値観が異なる中国が覇権国として台頭し、ロシアは戦後社会では禁止されていたはずの侵略戦争をあっけなく実施してしまった。中東各国も目覚ましい発展を示しており、民主国家と異なる価値観を持つ国が相対的に大きな力を持つようになってきた。

一方、西側諸国内部の変化も大きい。アメリカは長く国是としてきた自由貿易主義を自ら放棄しつつあり、建国当初を彷彿とさせる自国中心主義、保護貿易主義に向けて動き始めたように見える。

政治がまともに機能しなくなって久しい日本

同時並行で政治の機能不全も顕在化しており、政府の権威は相当程度まで落ちたとみてよい。今回のアメリカ大統領選挙はかつてないほど社会の分断が露呈する状況となっており、誰が大統領になっても社会の混乱は不可避といえるだろう。

日本はある意味で各国より先行しており、政治がまともに機能しなくなってから既に久しい。一連の機能不全の根底には、多くの国民が、このまま資本主義社会の運営を続けていても、これ以上、豊かになれないと感じ始めている現実がある。

一連の出来事から多くの知識人が、今後の国際社会は民主主義の後退と分断が進むのではないかと考え始めている。社会の分断化が進めば貿易が停滞し、人の往来や知見の共有も制限されるため、分断はますます顕著となる。このまま国際社会の混乱が続いた場合、数百年かけて築いてきた近代的システムが瓦解し、中世の時代に逆戻りする可能性すらささやかれている状況だ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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