コラム

EU、結束阻むハンガリー「封じ」に本腰...親露貫くオルバン政権に波乱の予感

2025年04月16日(水)12時15分
オルバン・ビクトル

ハンガリーのオルバン・ビクトル首相(2024年12月19日、ベルギー・ブリュッセル) Alexandros Michailidis-Shutterstock

<ウクライナ支援を妨げ続けるハンガリーにあの手この手で圧力をかけるEU。親露姿勢を貫くオルバン政権に対しては、国内でも逆風が──>

アメリカが欧州連合(EU)に敵対的な姿勢すら見せる今、ますますEUは反ロシアとウクライナ支援で団結しようとしている。

それなのにハンガリーのオルバン・ビクトル首相は、相も変わらず親露派だ。EU首脳会議では「拒否権」を投じて、ウクライナ支援をブロックしている。そんな中、EUでは、いよいよハンガリーの拒否権の行使を阻止しようとする動きがある。次の総選挙まで1年を切った同国では、オルバン一族と、取り巻きのお金持ちぶりが暴かれ、有力な対抗馬も登場している。

うんざりするEU首脳たち

オルバン首相に、EU加盟国の首脳の面々はうんざりしている。もはや一晩たりとも駆け引きをするつもりもないし、といって非難を口にすることも少なくなってきたという。その代わりにすべきは行動・前進であって、彼をEU首脳会議の「主役」にしないことだ。

大変珍しいことに、3月には2回もEU首脳会議が開かれた。ウクライナ支援のための新たな軍事支援パッケージは、27カ国の加盟国中26カ国が賛成したにもかかわらず、またもやオルバン首相の「拒否権」で採択できなかった。複数の欧州メディアが、冷ややかな空気を報告している。「友達」のドナルド・トランプ米大統領より、反対に投票するよう言われたのでは、というような憶測もささやかれていたという。

ハンガリーをEUから離脱させる? そのような方法は存在しない。唯一可能なのは、ハンガリーが望んだ時だけである。そこでいよいよ現実味を増してきたと思われるのが、ハンガリーを議決から合法的に外す案を実行することである。あの手この手で策が練られている。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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