コラム

顔も位置もDNAも把握される――米国で現実化する「SF級監視国家」

2026年01月03日(土)08時34分

LexisNexisもトムソン・ロイターと同様のデータブローカーで、自動車の運転データ(位置情報や日時)などをはじめとする莫大な個人情報を販売している。同社のウェブを見ると、多数の自動車のデータが同社に流れていることがわかる。

ただし、自動車は一例にすぎず、他に広範かつ莫大な個人データを保有している。同社は2,210万ドルでICEと契約しており、ICEは同社が保有する2億7,600万以上のアメリカ市民の個人情報にアクセスできる。

監視技術専門企業BI²テクノロジーズは、米国政府最大の移民監視プログラムを運営している。同社が提供する拘置代替措置(ATD)プログラムは、不法移民、あるいはそれが疑われる対象者を拘置する代わりに、監視装置を装着させる措置だ。

ATDに登録されると、足首や手首(専用スマートウォッチ「VeriWatch」)などに装着することになる。

本人が外すことはできず、それらからの信号が途絶えると、逃亡とみなされるリスクがある。バイデン政権下ではATDによって約37万人の移民が監視されていたが、2025年には約18万人まで減少した。また、同社はICEに携帯型虹彩スキャナーも提供している。

AT&Tからは、通信情報の生データならびにデータの分析・解釈が提供されている。数兆件に及ぶ米国民の通話記録やスマホの位置情報も照会可能となっている可能性が高い。

Clearview AIからは、顔認識システムを375万ドルで入手している。過去の契約書とプライバシー文書では「児童性的搾取事件」への使用が明記されていたが、今年の契約には「法執行機関に対する暴行事件」が追加された。これが抗議活動にも拡大される可能性が指摘されている。

なお、Clearview AIはプライバシー侵害の懸念から、一部州で使用を禁止されている。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、冬季パラ公式行事ボイコットへ ロシア参

ワールド

ECB総裁が任期満了前に退任とFT報道、仏大統領在

ワールド

ウクライナ和平協議、成果乏しく終了 「困難な交渉」

ワールド

焦点:ECB総裁後任、ノット氏・デコス氏有力 理事
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 3
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方...勝利のカギは「精密大量攻撃」に
  • 4
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 8
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 9
    アフガニスタンで「対中テロ」拡大...一帯一路が直面…
  • 10
    極超音速ミサイルが通常戦力化する世界では、グリー…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story