コラム

中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布される5つの言説

2024年10月30日(水)20時12分
中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布される5つの言説

Anton Pentegov - shutterstock -

<最近、複数の新聞で「沖縄(琉球)独立」が取り上げられ、注目を集めている。SNSでも関連投稿が増え、人工的に拡散されているとの指摘がある>

注目を浴びる沖縄認知戦

沖縄(琉球)独立という言葉だけ目にすると、沖縄県民の間で独立の気運が高まっているかのように思ってしまうが、実際は主に沖縄の外で話題になっているのだ。そもそもSNSへの投稿の多くは中国語だ。


中国語が堪能な日本人でなければ意味がわからないので、沖縄どころか日本人すら対象ではなかった可能性が高い。

もともと沖縄に対して中国は以前から干渉を行ってきていたが、2023年からそれが増加した。

これまでわかっている範囲では、X、Weibo、Douyin、TikTokなどのSNSで沖縄に関する話題が拡散したことが確認されており、加工された動画などが投稿されていた。

これらの拡散は習近平が2023年6月に沖縄と中国の歴史的なつながりについて言及、2023年7月の沖縄県知事の訪中といった話題があり、SNSでの盛り上がりはこうした出来事と連動していた。

人工的な拡散も確認されたが、オーガニック(自然発生)な拡散もあった。中国やロシアは自ら偽・誤情報を発信するだけでなく、インフルエンサーなどが自主的に発信した情報を拡散するようになっている。

たとえばコロナ禍において、中露は積極的に海外の反ワクチンや陰謀論の発言を拡散した。これによってリーチの増えた発信者たちは広告収入やフォロワーの増加といった恩恵を受け、中露とインフルエンサーの間にWinWinの関係ができていった。

インフルエンサー自身が親露、親中であった場合には、自己承認欲求も満たされる。いわば市場主導型のデジタル影響工作である。

このエコシステムの中で中国政府が望むような情報を発信する親中派インフルエンサーが活躍し、親中派が広げる沖縄に関する話題が国外で広がっていると、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は2023年11月の報告書で分析している。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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