アングル:米の中東関与の隙突く中国、台湾は軍事圧力と認知戦に警戒
写真は2月23日、台北市内で撮影。REUTERS/Ann Wang
Ben Blanchard Yimou Lee
[台北 25日 ロイター] - イスラエルとともにイランを攻撃した米国が中東での紛争に気を取られている隙に、中国がこれを悪用することを台湾が懸念している。中国国営メディアは中東での戦闘の事例を引用し、台湾が侵略を撃退するために備えている米国製兵器の有効性に疑問も投げかけている。
紛争の火種となり得る民主主義国家の台湾は、台湾を自国領土とみなす中国からの軍事的圧力の高まりに直面する。中国は昨年12月、台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。
台湾当局者は、中国人民解放軍による台湾近海への大規模な侵入が今月14、15両日に再開されたことは、東アジアから中東への戦力再配置を進める米軍の動きを中国が利用しようとしていることを示すと指摘する。
台湾の安全保障担当高官は「中国は影響力を行使するチャンスだと受け止めている」とし、「中国が作り出そうとしているのは、米国が部隊を撤退し、インド太平洋地域の戦力が中東へ再配置される際に、緊張と不安定な状態が醸成されるという認識だ」との見方を示した。
中国の国務院台湾事務弁公室と国防省はともにロイターのコメント要請に応じなかった。
台湾国防部(国防省)は、顧立雄国防部長(国防相)による中国の「武力によって併合しようとする意図は常に存在してきた」との今月の発言を引用した。
<地域間の米軍配備の均衡>
台湾の情報筋は、米軍の配備は地域間で常に均衡を保っているため、今回の措置によって中国が攻撃の隙を突くような状況が生じる可能性は低いと指摘する。
米国務省の報道官はロイターに対し、世界的な脅威に同時に対処する米軍の能力は引き続き「圧倒的」だと主張。さらに米国は、台湾海峡全域の平和と安定を維持することに尽力しているとコメントした。
台北医学大学の張国城教授(国際関係論)は戦闘が長期化すれば米国の武器備蓄を枯渇させ、アジア太平洋地域への関心をそらし、国内の反戦感情をあおることになるとして、「こうした要因の全てが(中国国家主席の)習近平氏が台湾への圧力を強めたり、台湾に対して武力を行使させたりすることで、戦闘開始前よりも自身の立場が強固になると信じさせる可能性がある」と言及。戦闘が長引けば長引くほど、中国が台湾に対して何らかの行動を起こした場合の米軍の思考や対応シナリオについて、中国が得られる教訓も増えることになると警鐘を鳴らした。
アジアにある米国の同盟国も、イランとの戦闘が中国に対する防衛力を弱める恐れがあるとも警告する。
<「認知戦」>
台北当局は、中国が中東での戦闘を、台湾に対する「認知戦」のプロパガンダに利用するのを警戒する。ロイターが入手した台湾当局内のメモによると、1例として戦闘後に中国が人工知能(AI)で生成したオンライン動画で台湾が「壊滅的な」エネルギー供給危機に直面していると主張するようなケースを想定している。
台湾の安全保障当局者は「いつか台湾が再び中国軍に包囲された際、人々のエネルギー問題に対する信頼を失うように中国側は仕向けたがっている」と話す。
中国国務院台湾事務弁公室は25日、中国が「統一」の恩恵としてインフラを改善させ、北京―台北間の高速道路を含む「高速交通網」の整備の提案が誘い水になるとの見解を示した。
これに先立って中国側は、台湾が中国による統治を受け入れるならばエネルギー安全保障を提供すると提案していた。だが、台湾経済部(経済省)の何晋滄副大臣は先週、これが「認知戦」だと一蹴していた。
中国の国営メディアは、イランを巡る戦闘が将来の台湾有事に結び付くとの見方を示す。台湾は米国と正式な外交関係を持たないものの、主に米国から武器の供給を受けているからだ。
<「米軍の作戦を観察する絶好のチャンス」>
米首都ワシントンのアメリカン・エンタープライズ研究所の防衛アナリスト、トッド・ハリソン氏は、この紛争が中国にとって米軍の作戦、特にステルス戦闘機F35のような最先端の兵力を観察する絶好のチャンスになるとして「中国は米国の防空・ミサイル防衛システムがどれほど機能しているか、そしてそれらをどのように運用しているかについて(データを)収集することになるだろう」と訴える。
防衛力強化のために400億ドルの追加防衛支出案を掲げる台湾も、4月上旬から延期された米中首脳会談の行方を注視している。
台湾の対中国政策を担う大陸委員会の沈有忠副委員長は、会談で台湾問題が取り上げられると予想するものの、影響を与える手段はないとして「しかし私たちは、自国の主権を守るため自国の国防に依存しなければならない決意があるという明確かつ一貫したメッセージを対外的に発信しなければならない」と語った。





