アングル:米レートチェック観測で市場動揺、円キャリー巻き戻しも 動きは限定的か
写真は日本円と米ドルの紙幣。2022年6月に撮影。REUTERS/Florence Lo
Atsuko Aoyama
[東京 26日 ロイター] - 前週末の急速な円高の背景で、日本だけでなく米国当局もレートチェックに動いたとの観測が浮上、為替市場が揺れている。協調介入を想起させるほか、米国の「ドル安志向」を象徴すると市場が解釈すれば、ドル全面安の展開もあり得るとの声が出ている。対円での動きに限っても、投機筋の手じまいや円キャリー取引の巻き戻しはドル下押しに作用しかねない。一方、24年夏の介入時とは異なり、円高方向の動きは限定的との見方もある。
<協調介入を意識>
米連邦準備理事会(FRB)による対円でのレートチェック実施の情報が伝わった際の市場の受け止めについて、上田東短フォレックスの阪井勇蔵・営業企画室室長は「米国の方でも円安是正に動いているとの印象を与え、日米の協調介入が意識されている」と話す。ドル/円は日銀直後の急落と合わせ、15時間足らずの間に3.5円以上、円高に振れた。
とりわけFRBのレートチェックは異例と市場で受け止められており「仮に米国としてドル安を志向していると市場が解釈するなら、全面的なドル売りに発展する可能性もある」(三井住友銀行市場営業部為替トレーディンググループの納谷巧グループ長)との声がある。
レートチェック観測が広がったタイミングで、ドルはウォンに対しても大きく下落した。ベセント米財務長官は、韓国ウォン安に関してもファンダメンタルズと一致しないなどと懸念を表明していた。三井住友銀の納谷氏は、影響が円だけにとどまらず全面的なドル安として広範に及べば、協調介入の思惑などからドルが150円を割り込む可能性もあると指摘する。
ドル安材料にもなり得る次期FRB議長の発表を控えていることも、ドル安の思惑につながりやすい。週明けのドル/円相場は前週末の155円後半から一段安で始まり、154円前半へと下げが深まる場面もあった。ドルはユーロに対してもいったん1.19ドル目前まで下落した。
<円キャリーの手じまいに注目>
仮に影響が広範に及ばないとしても、投機筋の手じまいやキャリー取引の巻き戻しが今後、ドル/円相場の下押し圧力になりかねないとの見方もある。今回、市場が強く意識したレートチェックは介入の前段階とされ、投機筋の「キャリー取引に対する意欲を削ぐ」(あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジスト)可能性がある。
キャリー取引とは金利差を利用して利益を得る投資手法で、金利差が拡大するほど妙味が増す。一方、為替が急変動する場合、金利差で得られる利益が吹き飛ぶ恐れがあるため、ボラティリティーの安定を前提とした取引でもある。
そのボラティリティーが高まってきていることも、円キャリー取引巻き戻しの思惑につながっている。ドル/円の1カ月物インプライド・ボラティリティーは年始の7%台から、足元では11%をやや下回る水準まで急上昇した。
<キャリー巻き戻しでも150円まで>
もっとも、仮に投機の手じまいやキャリーの巻き戻しが発生するとしても、最後に為替介入が実施された2024年7月当時とは、やや状況が異なりそうだ。
24年当時は介入や米国のドル安など一連の流れが重なり、約1カ月で20円超ドル安/円高が進んだが、足元では、投機の投げが加速し、キャリーが巻き戻されてもドル/円の下げは5円程度、150円までの下落にとどまりそうだとあおぞら銀の諸我氏はみている。足元で投機筋は、全体として円売りを大きく膨らませているわけではないことが背景にある。
20日時点の投機筋のポジション動向を映すIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取り組み状況の内訳では、足が速いとされるレバレッジド・ファンドが約8.4万枚と円の売り越しに大きく傾いているのに対して、より長期の目線とみられるアセットマネジャーのポジションは引き続き約1.7万枚の円買い越しとなっている。アセットマネジャーのポジションは24年7月上旬時点で10万枚超の売り越しに傾いていた。
金利差の点でも妙味は薄れている。日米金利差で純粋に金利差のみを狙った取引では、24年当時はポジションを3カ月維持することで1ドルあたり2円近く得られた利益が、足元では1円程度にしかならない。三井住友銀の納谷氏は、24年7月当時と比べて、純粋に金利差を狙った取引は「2-3割程度」にとどまっているとの見方を示す。
高市政権の財政拡張路線に基づく円安への思惑も根強い。レートチェックや介入で根本的に市場の認識が変わるとまでは想定されていない。相場がこれ以上下落しなければ、むしろ「安値でキャリーのポジションを組むことになり、一段安となった場合のリスクも小さく、取り組みやすい」環境でもあると、あおぞら銀の諸我氏は話している。
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