ゴールドラッシュかリスクか、AIに世界の大口投資家の見方さまざま
12月10日、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビで開催されたアブダビ・ファイナンス・ウィーク(ADFW)に出席した大手投資家は、人工知能(AI)関連企業の高評価額に懸念を表明した一方、AI分野の長期的な成功に不可欠なインフラ投資は無視できないとの考えを示した。写真は10月、米インディアナ州ニューカーライルのアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)AIデータセンターで働く技術者。AWS提供(2025年 ロイター)
Nell Mackenzie Tala Ramadan Utkarsh Shetti
[アブダビ 10日 ロイター] - アラブ首長国連邦(UAE)アブダビで開催されたアブダビ・ファイナンス・ウィーク(ADFW)に出席した大手投資家は、人工知能(AI)関連企業の高評価額に懸念を表明した一方、AI分野の長期的な成功に不可欠なインフラ投資は無視できないとの考えを示した。
米IT大手のアルファベット、メタ・プラットフォームズ、オラクルなどはこの数カ月、AI開発競争に遅れを取らないよう社債発行を加速させ、AIバブル懸念を高める要因となっている。
ADFWに出席した金融界の有力者らにとって、AIは最も注目された話題だった。ここに一部を紹介する。
◎運用大手フランクリン・テンプルトンのジェニー・ジョンソン最高経営責任者(CEO):「ゴールドラッシュの初期」
ジョンソン氏は、最近の市場動向とAI関連バブルへの懸念をゴールドラッシュの初期段階に例えて「だからどうした。7銘柄の話だ。私たちは現代で最大の技術変革の一つについて議論しており、これは(ゴールドラッシュで)つるはしやシャベルの価格が高騰したと言っているようなものだ」とパネル会議で発言した。
「AIの影響はまだ始まったばかりだ」とし、AIが変革をもたらし、企業収益に表れるほどの意味を持つにはまだ数年はかかるとの見方を示した。これはAIが生産性、労働市場、企業収益に与える影響を評価し続けている政策立案者やエコノミストらの見解と一致している。
◎オルタナティブ資産運用ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマンCEO:電力が問題
シュワルツマン氏は、AIが今や経済活動のほぼ全領域に影響を及ぼしており、巨額の設備投資と電力需要を生み出していると指摘して「理論的には電力網の規模を倍増させる必要がある。これは重大な問題だ。電力を生み出すには、社会で他にも多くの事が起こらざるを得ない」と会議で述べた。
◎政府系ファンド、アブダビ投資評議会(ADIC)公共市場担当最高投資責任者(CIO)のシブ・スリニバサン氏:「まだ発展途上」
ADICは、評価額が急騰しているAI関連株を投資の好機だと捉える中東の大手投資家の一つだ。スリニバサン氏は「AIとバイオテクノロジーは大きな勝者であり、私が好んでいる分野だ。今後も好ましいと見ている」とした上で、業界はまだ発展途上だとの見解を示した。
◎ヘッジファンド運用ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)創業者のクリス・ホーン氏:「不確実性とリスク」
一部のヘッジファンドマネージャーは、AIが企業とその株価にどれほどのプラスになるのかに疑問を呈した。ホーン氏は会議で、現段階では特定の企業や投資は全く意味をなさないとの見解を示した。具体的な企業名は挙げなかったが、AIは破壊的な力となり、必ずしもプラスとは限らないと指摘した。
ホーン氏は「破壊的な力は増大している」とし、投資家の「最良の投資対象は限られており、それらは減少している」と言及。一方で不確実性とリスク要因は「桁外れだ」と語った。
◎コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)グローバル・リアルアセット部門責任者のラジ・アグラワル氏:「データセンターに注目」
アグラワル氏は、AIがもたらす「巨大なチャンス」への投資はデータセンターに集中すべきだとし、「警戒すべきなのは株価収益率(PER)の高い銘柄への投資だ。こうした投資の資金回収には一定期間の成長が必要になる」との見方を示した。
ビジブルアルファが先週発表したデータによると、オラクルはAI用データセンターに多額の投資をしているため、数年間にわたってフリー・キャッシュ・フローがマイナスとなる見通しだ。
データセンターに関し、ムバダラ投資会社のリアルアセット部門CEOのカレド・アル・シャムラン・アル・マリ氏は、同社の戦略は投資原則を堅持し、過激な成長を追わないことだと説明した。





