アジア米国間の海上運賃、さらに下落も 供給過剰や貿易摩擦で

海運業界関係者らはアジアと米国間の海上運賃が今年さらに下落すると予想している。写真はコンテナを積載した貨物船。8月4日、カリフォルニア州オークランドで撮影(2025年 ロイター/Carlos Barria)
Jeslyn Lerh
[シンガポール 5日 ロイター] - 海運業界関係者らはアジアと米国間の海上運賃が今年さらに下落すると予想している。輸送能力が需要を上回っていることや、関税や地政学的緊張によって貿易ルートが変化していることが背景にある。ただ、船舶の航路変更がある程度下支えするとみられる。
海運分析会社ゼネタによると、アジアから米国西海岸および東海岸へのコンテナの平均スポット価格は6月1日以降、それぞれ58%と46%下落しており、さらなる下落が予想されている。
不確実性を高めているのは、米国と中国間の貿易交渉が解決に至っていない点だ。両国は先週、互いに一時停止中の関税措置をさらに90日間延長することで合意した。中国・米国間の貿易ルートはコンテナ船運航会社にとって依然として最も収益性の高いルートの一つだ。
ゼネタの最高技術・データ責任者であるエリック・デベタック氏は「世界的に顕著な過剰輸送能力が存在する。これが今後も市場に影響を与え続けるだろう」と述べた。
デベタック氏はまた、「中国から米国への貿易は落ち込んでおり、欧州連合(EU)の経済も必ずしも好調ではないため、海運業者は必死に運賃を維持しようとし、運航の中止やキャンセルが頻繁に起こるようになるだろう」と語った。
DHLグローバル・フォワーディング・アジア太平洋のニキ・フランク最高経営責任者(CEO)は、「海運業者は利益を求めて太平洋横断路線で輸送能力を急増させたが、勢いが衰えるにつれて過剰供給が顕著になっている」と指摘した。
ベソン・ノーティカルの海事アナリスト、ジャール・ミルフォード氏は、下半期にはさらに多くの船舶が市場に投入されると予想されるため、運賃は着実に低下するとの見方を示した。
<航路変更が運賃を下支え>
一方で、航路の変更が過剰輸送能力の一部を吸収している。イエメンの親イラン武装組織フーシ派による攻撃を受け、海運業者は紅海を迂回している。また、一部の船舶は関税を避けるため米国の港を回避している。アナリストらによると、こうした長距離航海がより多くの船舶を稼働させ、運賃の下支えに寄与している。
ジェフリーズ・リサーチのアナリストは紅海について、「迂回輸送はコンテナ船の供給の10%以上を吸収し続けており、稼働率を86─87%という健全な水準に保っている」と指摘した。
また、中国から米国への輸出が減少する一方で、他の地域への出荷は増加している。ジェフリーズのアナリストは、ここ数週間の米国向けスポット予約状況から判断すると、7月の貨物量は減少する可能性が高く、太平洋横断運賃は今年最低水準に落ち込むとの見通しを示した。しかし、欧州や中南米などの市場向けの運賃は依然として高水準を維持しているという。