南アフリカ財務相と中銀総裁、インフレ目標巡り対立

南アフリカ準備銀行(SARB、中央銀行)が財務省の承認なしにインフレ目標の引き下げを決定したことを巡り、投資家の間でアフリカ最大の経済国について金融政策の一貫性に疑問が生じている。写真は南ア中銀のハニャホ総裁とゴトングワーナ財務相。4月に米ワシントンで開かれたIMF世銀会合で(2025年 ロイター/Elizabeth Frantz)
Colleen Goko
[ヨハネスブルク 1日 ロイター] - 南アフリカ準備銀行(SARB、中央銀行)が財務省の承認なしにインフレ目標の引き下げを決定したことを巡り、投資家の間でアフリカ最大の経済国について金融政策の一貫性に疑問が生じている。
南アフリカ中銀のハニャホ総裁とゴトングワーナ財務相は公に意見が対立することがめったにないが、インフレ目標の引き下げ問題について事前に一致していなかった。中銀は7月31日、インフレ目標を従来の3―6%の中央値の4.5%から3%に引き下げる意向を示したが、ゴドングワーナ氏はこれに即座に同意しなかった。
市場は決定を好感し、南アフリカ国債が好調となり利回りは5年ぶりの低水準に下がった。1週間のリターンは2.2%とトルコ、チリ、ブラジル、メキシコを上回った。
インフレ目標はやがて引き下げられるだろうと基本的に想定する投資家が多かったが、ハニャホ氏がゴドングワーナ氏の承認なしに決定したのは衝撃を与えた。フランスの金融大手BNPパリバの中央欧州・東欧州・中東・アフリカ経済部門の責任者ジェフリー・シュルツ氏は「決定自体は驚きでなかった。財務省が正式に調整するよりも前に、中銀が3%を目標とすると明言したのが意外だった」と述べた。
ハニャホ氏は現在の目標幅があまりに広くて競争力を損なうと主張しているが、ゴドングワーナ氏は必要とされる技術的・政治的な協議なしに目標変更を決定すべきではないと述べている。
インフレ率は現在4.5%を下回っており、インフレ期待は現在のインフレ率の水準よりも低下している。ハニャホ氏は中銀がこうした状況を固定化できれば国民が恩恵を受けるだろうと述べた。
インフレ目標の引き下げはある程度短期的な痛みを伴う可能性があるだろう。米金融大手ゴールドマン・サックスのように、先取的に政策金利を引き下げるかもしれないと予測するアナリストがいる。そうした動きはインフレ見通しが中銀の想定以上に落ち着いているとの見方に基づくことになるが、中銀は同様に世界的なリスクに対処し物価を引き下げるために政策金利を長期間高く維持する必要が生じるかもしれない。賃金や価格の調整もまた時間がかかり、その結果消費や投資が減少し、恩恵を受けるよりも先に雇用喪失につながる恐れがある。
ゴドングワーナ氏は「インフレ目標を変更する際は財務省、中央銀行、内閣、利害関係者と包括的な協議を持つべきだ」と述べた。
ハニャホ氏は「政策変更は容易ではないが、現行のインフレ目標にこだわるのにもコストがかかる」と語った。