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焦点:トランプ氏、若者の支持拡大 インフレやウクライナ支援に疲れ

2024年04月22日(月)14時28分

 4月21日、 童顔で両耳にイヤリングを着けたイサイヤ・ターナーさん(写真)は、中高年に多いステレオタイプのトランプ氏支持者には見えない。ウィスコンシン州ミルウォーキーの事務所で17日撮影(2024年 ロイター/Eric Cox)

Nathan Layne Tim Reid

[グリーンベイ(米ウィスコンシン州) 21日 ロイター] - 童顔で両耳にイヤリングを着けたイサイヤ・ターナーさん(23)は、中高年に多いステレオタイプのトランプ氏支持者には見えない。

だが、彼は今月2日にミルウォーキー郊外の自宅から車で2時間かけて、ウィスコンシン州グリーンベイの集会に大統領選共和党候補のトランプ前大統領を見に出かけた。

一部の世論調査によると、ターナーさんのようにトランプ氏を支持する若者は今後も増え、選挙で鍵を握る存在になるかもしれない。

民主党候補となるバイデン大統領は2020年の前回選挙で若者票を圧倒的に多く獲得していただけに、若者の支持率が低下すれば再選の望みが薄れかねない。

母親と犬のブリーダー事業を営むターナーさんは、20年にトランプ氏に投票した。石油掘削推進、銃規制反対(ターナーさんは銃器を数丁所有している)、不法移民取り締まりなどのトランプ氏の公約を支持している。

「トランプ氏が大統領在任中、ぼくを怒らせたことは一つもない。バイデン氏が大統領になった今、同意できないことは数え切れないほどある」とターナーさん。「友人の多くはぼくと同じ考えだ」と答えた。

3月にロイター/イプソスが行った世論調査によると、18歳から29歳の米国民の支持率はバイデン氏が29%、トランプ氏が26%とわずか3ポイント差で、残りは他の候補者を支持するか、誰に投票するか分からないと答えた。

11月5日の投票日まで、この層でトランプ氏(77)がバイデン氏(81)に迫る勢いを保てば、バイデン氏が若者票の得票率で24ポイント勝った20年と比べ、大きく票を伸ばすことになるだろう。

バイデン氏を巡っては、高齢であることに加えてガザ地区の戦争でイスラエルを支持する姿勢が懸念され、若者の支持率低下に拍車がかかっている。同時にヒスパニック系有権者も失いつつある。

若者が徐々に共和党に傾きつつある兆候も見える。バイデン氏が学費ローンの返済免除、手ごろな価格の住宅の拡大、中絶の権利擁護など、若者の引き留めに努めているにもかかわらずだ。

ロイター/イプソスの世論調査によれば、18ー29歳の米国民のうち共和党支持者の割合は、16年の24%から20年には26%、そして今年は28%へと上昇している。

グリーンベイでは2日、みぞれや雨が降る悪天候の中で約3000人がトランプ氏を見ようと会場の外に列を作った。例年通り年配者の割合が多かったが、若者も数百人いた。

ロイターはここで、30歳以下の20人にインタビューを実施。トランプ氏を支持する理由として最も多かったのはインフレと、経済が自分たちのために機能していないという認識だった。バイデン政権下の株価上昇や失業率の低さよりも、生活必需品の価格上昇が一部の人々にとってより切実であることが分かる。

「それなりに稼いでいるのに、今の給料では家が買えない」と語るのは、近くの病院で警備員をしているスティーブ・ウェントさん(26)。「今こそ、物価を下げてくれる人を大統領に戻す時だ」と話した。

インタビューではまた、ロシアと戦争するウクライナへの支援に慎重なトランプ氏に同意すると答えた人が大多数を占め、バイデン氏の外交政策とは相反する孤立主義的な姿勢を示した。

歴史学を専攻するコリン・クレゴさん(19)は、海外に費やしている資金を、薬物中毒など国内問題に使った方が良いと話した。

「米国がウクライナでやっていることが、あまり好きではない。彼(トランプ氏)の話を聞くと、とても愛国的で、とても 『米国第一主義 』で、それが好きだ」という。

ロイターがインタビューした20人のうち、15人はトランプ氏を支持する理由としてインフレやその他の経済的懸念を挙げ、12人は同氏の移民制限計画を重視していると答えた。

トランプ氏が直面する4件の刑事訴追や、20年の選挙結果を覆そうとした同氏は民主主義を脅かす存在だ、という考えには全員が関心はないと答えた。1人は黒人で、他の19人は白人だった。8人は今年初めて大統領選の投票に臨む。

ケイトリン・ヒューニンクさん(20)は、若者は概して左寄りで、自分が意見を言うと眉をひそめられる傾向があるため、若いトランプ支持者であるのは難しいことだと明かす。

しかし、ウィスコンシン大学グリーンベイ校に通う仲間たちの間には最近変化が見られ「私の考え方を受け入れてくれるようになり、共和党に入る友達も増えた」という。

<ぎりぎりの生活>

悪天候をものともせずトランプ氏に会いに行く若者たちが、有権者全体を代表するサンプルではないのは確かだ。それに、11月の選挙が現時点の世論調査結果通りになるとは限らない。若年層の有権者は高齢者よりも投票する割合が少ないため、特に予測が難しい。

さらに一部の世論調査によると、バイデン氏は今なお若者の支持率で大きなリードを保っている。

先週実施されたエコノミスト/ユーガブの調査では、30歳以下の有権者の51%がバイデン氏を選ぶと答え、トランプ氏は32%にとどまった。18日公表のハーバード・ユース調査によると、若年有権者の支持率はバイデン氏がトランプ氏を19ポイント上回っている。

ハーバード大学世論調査担当ディレクターのジョン・デラ・ボルペ氏は「ドナルド・トランプ氏は若者票を獲得していない」と語った。

バイデン氏陣営も手をこまねいているわけではない。今年3月には、デジタル・プラットフォーム全体で広告に3000万ドルを投じ、高校や大学のキャンパスで学生と対話しボランティアを募るプロジェクトを発表した。バイデン政権のグリーンエネルギー投資や中絶権利保護の取り組みを若者に伝える活動も行っている。

もっとも、マリスト・カレッジが3月に実施した世論調査は、バイデン氏にとって赤信号となった。20代後半から40代前半のミレニアル世代と、1990年代半ば以降に生まれたZ世代の有権者の間ではトランプ氏の支持率が2ポイント勝っており、18歳から29歳の61%がバイデン氏の大統領としての仕事ぶりを評価しないと答えたのだ。

トランプ氏陣営の顧問は先月、記者団に若者を支持拡大の余地がある層と見なしていると語った。トランプ氏はしばしば、ロシアによるウクライナ攻撃は自分が大統領なら起こらなかったと主張しており、こうした海外の紛争と経済問題が、若年層にアピールする重要な争点になるという。

共和党全国委員会の報道官、アンナ・ケリー氏は「多くの米国人と同様、若者も家賃やガソリン代、食料品を買う余裕がなく、実質賃金が急減しているため家を買うのにも苦労している」と語った。

ケリー氏はまた、米国が正しい方向に進んでいると考えている若者が9%しかいないというハーバード大の世論調査結果も、トランプ氏に傾きつつある人々がいる証拠だと指摘した。

若い有権者の間では、トランプ氏支持率は男性の方が高いようだ。ハーバード大の調査では、若年男性におけるバイデン氏のリードは6ポイントにとどまり、4年前より20ポイント縮小した。女性ではこの差が33ポイントで、ほとんど変わっていない。

ハーバード大の世論調査責任者デラ・ボルペ氏は男女差が生じる背景の一つとして、若年男性は「ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)」や「有害な男らしさ」といったリベラル的な見解を押しつけられ、率直にものを言う権利を失っていると感じていると説明した。

トランプ氏は今回の選挙戦で、若い男性が好きな総合格闘技団体UFCのイベントに何度か顔を出すなどした。

これらは、冒頭のターナーさんのような有権者に響くことを意図したものだ。

ロイターが取材した他の若者同様、ターナーさんも、発言に伴う政治的な結果を気にしないトランプ氏の話し方が魅力的だと語る。トランプ氏が言う通り、バイデン氏こそが米国にとって真の脅威だとターナーさんは信じている。

トランプ氏の発言には非人間的で嫌な部分もあるが「でも同時に、もしそれがこの国が驚異的に良くなることを意味するのなら(中略)そして自由な国であり続けるのなら、それと引き換えにぼくの感情が傷付くのも受け入れられる」とターナーさんは語った。

ロイター
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