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アングル:日銀利上げでも円安、残る「介入カード」 効果には疑問も

2025年12月22日(月)19時05分

日銀本店前で12月19日撮影。REUTERS/Manami Yamada

Atsuko ‍Aoyama

[東京 22日 ロイター] - 日銀が30年ぶりの水‌準へと利上げしたが、ドルは157円台まで上昇、ドル高/円安が止まらない。円ショートの投資家にとって、次回利上げまで時間的な猶予ができた側面が意識されているためだ。日本サイ‌ドとして為替介入以外、目先の円高​方向へのカードは残っていないとの見方に加え、その効果への疑念もつきまとう。しばらくは市場と当局の神経戦が続きそうだ。

<警戒の反動>

日銀の利上げ後、円安が急速に進んだ背景の一つがタカ派警戒の反動だ。今後の利上げパスを示す「タカ派な利上げ」が警戒されたが、強気発言は見当たらず、円の売り戻しが誘発さ‌れた。19日の海外時間には一時157.78円へと11月20日に付けた直近の高値に迫る場面もあった。

前週末の日銀会合後の深夜に片山さつき財務相が、22日朝方には三村淳財務官が円相場での「一方向で急激な動き」に言及した。日米金利差とドル/円の相関が成り立つ状況では、日本が利上げに、米国が利下げにそれぞれ動けば金利差が縮小してドル安/円高が進むというのがセオリーだが、それに反する動きとなっていることは確かだ。

為替介入が差し迫っているとみる向きはまだ少数派だが、日銀の利上げが実施され、円高方向へのカードが減る中、「次の弾は為替介入へと視線が移りやすい」(三井住友銀行の鈴木浩史チーフ為替​ストラテジスト)との声がある。

「急激な動き」の定義を具体的に政府当局者が⁠明らかにするのはまれだが、2024年2月中旬に当時の神田真人財務官が「年初来10円もの円安は急速」‍だと言及しており、目線の一つと見る向きもある。

SMBC日興証券の丸山凜途・金利・為替ストラテジストは、2022年と24年に20営業日ベースで見て8円以上ドル/円が変動した局面と為替介入の時期が「一致する」と指摘、足元はまだ過去の介入局面ほどの変動にはなってないとみている。

実際、日銀会合後に157.78円で高値を付けた19日を基準とすると、20日営業‍日さかのぼった11月21日の高値は157.53円で、円安への振れはわずか25銭となる。その前日‍の11月20‌日は、高市早苗政権の発足につながった自民党総裁選後の円安局面での高値‍の157.90円を付けたが、そこから20営業日をさかのぼっても変動幅は5円強となる。

<投機筋は円買い越し>

実際に介入に踏み切ったとしても、その効果は過去の介入時に比べて限定的との声もある。

円買い介入は、投機筋の円売りが膨らんだタイミングで行うのが「戦意喪失」の面からは効果的とされる。投機筋の円売りポジションが積み上がっていた昨年夏には、7月前半⁠に介入実施後、7月末に日銀が利上げし、ドル/円は約1カ月で160円付近から140円台前半へと20円近く下落した。

ところが、投機筋のポジション動向を映すとされるIMM通貨先物⁠の非商業(投機)部門の取組状況によると、円のポジ‍ションは12月9日時点で1万7448枚の買い越し。2日時点の3万6418枚からは買い越しが大幅に減少してはいるものの円買い越しのサイドにある。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、​対外直接投資やNISA(少額投資非課税制度)などを通じた家計の対外投資が続いている状況も踏まえると、足元の円安は「需給的には投資と実需主導での円安が進んでおり、投機主導とは言いにくい」との見方を示す。

物価水準との比較で政策金利の水準が低すぎるため「構造的に円安を止めるのは難しい」と植野氏は話している。

ロイター
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