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インタビュー:90円前半に円高進行すれば介入すべき=浜田参与

2016年05月10日(火)19時48分

 5月10日、内閣官房参与の浜田宏一・米イエール大名誉教授は、米当局者らは日本の為替市場介入の可能性を懸念しているとしたが、1ドル=90円前半に円高が進む場合は介入すべきと語った。写真は都内で2014年12月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

[東京 10日 ロイター] - 安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は10日、ロイターとのインタビューに応じ、日本経済は「うまくいっている」とし、日銀は現行の金融緩和政策をしばらく続けていくべきとの見解を示した。

為替市場で円高が進む中、米当局者らは日本の為替市場介入の可能性を懸念しているとしたが、1ドル=90円前半に円高が進む場合は介入すべきと語った。

追加の金融緩和期待が高まっていた4月28日の金融政策決定会合で日銀が政策の現状維持を決めて以降、金融市場では円高・株安が進行したが、浜田氏は雇用情勢の改善や、高水準の企業収益の継続など「日本経済はうまくいっている。アベノミクスの理論は機能している」と強調した。

<物価目標、日銀版コアコア1.5%程度でいい>

日銀のマイナス金利政策についても、国債金利や住宅ローンなど貸出金利の低下という効果が表れており、「政策的に有効な手段」と評価した。1月のマイナス金利の導入決定後に為替市場で円高が進行したことは、マイナス金利導入が要因とは思わないとしながらも、「マイナス金利をやるほどの異常事態という市場の考えを育んでしまった可能性はある」との見方を示した。

それでも、日本の経済・物価に金融政策は「それなりに効いている」とし、実体経済への効果波及までの時間差も考慮し、労働市場に陰りが出てこない限り、「日銀は今の金融緩和政策をしばらく続けていけばいい」と述べ、市場で根強い追加緩和期待に距離を置いた。

日銀が2%の物価安定目標の目安にしている、生鮮食品を除いた消費者物価指数(コアCPI)は依然としてゼロ%付近で推移している。これに対して浜田氏は、原油価格が低迷している時にコアCPIの2%にこだわる必要はないとし、現在1%程度となっている、コアCPIからエネルギーを除いた指標(日銀版コアコアCPI)が「2%になれば満点だが、1.5%程度になればいいのではないか」との見解を示した。

財政拡大を金融緩和でまかなう、いわゆるヘリコプター・マネーの発想については「

ヘリコプター・マネーを主張する人たちは、何をしてもインフレが欲しい、将来がどうなってもいい、ということだと思う」と指摘。「政府が使うお金をすべて日銀が刷る制度にしてしまうと、いくらでもインフレにできる」とし、「ヘリコプター・マネーはそうしたインフレに対する備えが不足している」と語った。

<米当局者ら、日本の為替介入に懸念>

最近の円高の背景について市場では、日銀の金融政策に対する失望に加え、米国が公表した為替報告書において日本が監視対象国に指定されるなど、米為替政策が転換したと読む向きもある。

浜田氏は米国において環太平洋連携協定(TPP)の承認が危ぶまれていることなどを挙げ、「本当かどうかわからないが、政治的に大きな問題になると米国は脅かしてくるという。それで日本は足元をみられ、ヘッジファンドが円買いをしている」とし、実際に「最近、米国のエコノミストやオフィシャルから、日本の為替介入について多くの懸念を聞いている」とも指摘した。

もっとも、「(ドルが)90円前半くらになれば、いかに米国が怒ろうとも介入しないといけない。金融政策で待っているわけにはいかない」と語った。

また、来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げについては「波風がこれだけ荒いときに消費税を上げることは、危険が多過ぎる」とし、あらためて慎重な考えを示した。

*詳細を追加しました。

(伊藤純夫 金子かおり )

ロイター
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