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ECB先行きに自信、9日から国債買い入れ

2015年03月06日(金)04時18分

 3月5日、ECBは主要政策金利であるリファイナンス金利を0.05%に据え置いた。写真はドラギ総裁。ブリュッセルで2月撮影(2015年 ロイター/Francois Lenoir)

[ニコシア/フランクフルト/アテネ 5日 ロイター] - ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は5日、理事会後の会見で、来週9日から国債買い入れを開始すると明らかにした。同時に公表したスタッフ予想では、今年と来年の成長率予想を引き上げた。

国債買い入れは当面、2016年9月まで継続し、必要なら延長も視野に入れるが、成長予想の引き上げは買い入れ延長を困難にするとみられている。

主要政策金利であるリファイナンス金利は予想通り0.05%に据え置いた。上限金利の限界貸出金利は0.30%に、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.20%にそれぞれ据え置いた。

ドラギ総裁は「ECBは2015年3月9日にユーロ圏の公的証券の流通市場での買い入れを開始する。前年に開始した資産担保証券(ABS)、およびカバードボンドの買い入れも継続する」と述べた。

ECBは月額600億ユーロ(667億4000万ドル)の国債、および一部民間部門資産の買い入れを計画している。

今年の域内総生産(GDP)見通しは1.5%で、12月予想の1.0%から引き上げた。16年も1.9%と、12月予想の1.5%から上方修正した。

ドラギ総裁は記者会見で「最新の経済統計、とりわけ2月までに判明した調査では、年初時点で経済活動が多少ながら一段と改善したことがうかがえ、今後についても、景気回復は裾野が広がり、段階的に力強さを増すものとみられる」と指摘。

「ユーロの経済見通しをめぐるリスクは、依然下向きだが、最近の政策決定、および原油安を受けて後退した」と述べた。

今年のインフレ率見通しは0.0%と、12月予想の0.7%から引き下げた。16年は1.5%と、12月予想の1.3%から引き上げた。

2017年は1.8%としており、2%弱の目標と整合する水準まで回帰すると見込む。

ベレンバーグ銀行のエコノミスト、クリスチャン・シュルツ氏は「この強気の見通しが現実のものとなれば、2016年9月以降も量的緩和(QE)が継続されることはない」とし、「いずれかの時点で政策金利の正常化議論に着手する可能性がある」と分析する。

<ギリシャ向け支援>

ギリシャに対しては、緊急流動性支援(ELA)枠を5億ユーロ拡大し約690億ユーロとしたと表明。同国の銀行には支払い能力があり、資本水準も最低要件を満たしているとの見方を示した。

そのうえで、ギリシャの銀行システムが支払い能力を有していることがECBが同国に対するELAを承認する前提条件となっているため、支払い能力維持が非常に重要になっていると指摘。

ECBがユーログループ(ユーロ圏財務相会合)に対し、突発的に緊急事態が発生した場合、資本増強に向け約100億ユーロの資金が利用できるように用意を整えておくよう要請したことを明らかにした。

ただ、ECBはギリシャの短期債発行上限の引き上げは承認しないとした。また、ギリシャ国債は9日に開始する国債買い入れの対象にはならないと述べた。

<QEの成果めぐっては懐疑論も>

ロイターが実施したエコノミスト調査では、ECBがインフレ率を目標の2%弱の水準に戻すのに国債買い入れが有効との見方は約半数にとどまり、また半数が国債買い入れが2016年9月以降も継続されると予想した。

また一部では、ECBがマイナス金利で国債買い入れを実施すれば、市場を歪めかねないとの懸念が上がっている。

これに対しドラギ総裁は、買い入れ対象の国債について、現在マイナス0.2%となっているECBの中銀預金金利を下回らない限り、買い入れを行うと明らかにした。

ダンスケ銀行のエコノミスト、パーニル・ボムホルツ氏は「市場ではすでに、利回りがマイナス0.2%を割り込んだ場合、ECBは預金金利の引き下げを余儀なくされるとの憶測が出ている」と指摘。「そうなれば自分の尻尾を追いかける犬と同じだ。実際にそうなるとは思わないが、ECBに引き下げ圧力がかかるのは確実」との見方を示した。

ECBのQE計画では、ユーロ圏の各国中銀は自国の債券市場での買い入れに専念する。リスクを共有すれば、損失の穴埋めを押し付けられかねないと危惧するドイツの懸念を軽減するためだ。

ECBが買い入れの対象とする国債が不足するのではとの懸念もある。市場には資金があふれているほか、銀行は国債など質の高い資産を保有することを義務付けられている。

ドラギ総裁はユーロ圏の国債の半分以上は域外の投資家が保有しているとし、「複雑な問題もあるだろうが、重要ではないと考えている」と述べた。

総裁はまた、今度はユーロ圏各国の政府が役割を果たすべきだとけん制。構造改革を通じて景気回復に確実に寄与する必要があると強調した。

*内容を追加して再送します。

ロイター
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