コラム

共産党国家に捧げるジョーク:変装した習近平に1人の老人が言ったこと...

2019年12月13日(金)11時30分

ILLUSTRATION BY AYAKOOCHI FOR NEWSWEEK JAPAN

<中国は目覚ましい発展を遂げているが、それを享受するには条件があるようで......。世界各地でジョークを収集してきたノンフィクション作家、早坂隆氏によるジョーク・コラム第2回>

【生活の改善】
習近平(シー・チンピン)が中国人民の生活の実態を知ろうと、変装して街の視察に出た。

習近平は公園のベンチに座っていた一人の老人に話しかけた。

「最近の暮らし向きはいかがですか?」

「ええ、とてもよくなっています」

習近平はうれしくなって、さらに聞いた。

「例えばどのように?」

老人は答えた。

「以前は小さくて汚い木造の小屋に住んでいたのですが、今ではキレイな高級マンションで暮らしています。食事も昔はトウモロコシばかりでしたが、今では肉や魚を好きなだけ食べることができます」

習近平は心の中で歓喜した。

(素晴らしい! 私の政策がうまくいっている証拠だ。人々の生活は間違いなく向上している。本当によかった!)

老人は笑いながら続けた。

「本当にうれしい限りですよ。娘が共産党の党員と結婚できるなんて」

◇ ◇ ◇

中国を訪れるたび、高層ビルが雨後の筍(たけのこ)のごとく増えているのがよく分かる。北京や上海の建物の高さは、とうに東京や大阪以上。近年の訪日中国人は、日本の建物が思ったよりも低いことに驚くのだとか。世の中とは、いつの間にか逆さまになっているものである。

確かに中国の経済発展は瞠目(どうもく)に値する。しかし、その一方で都市部の郊外などに広がるスラム街のような一角は、以前とあまり変わっていない様子。中には見違えるほど様変わりしたエリアもあるが、その理由を聞けば、人々の暮らしが豊かになったのではなく、当局からの立ち退き命令によって従来の住民が追い出された結果であるとのこと。まったくジョークにもならない。

日本を含め、世界のどの国でも格差の問題は叫ばれるものだが、大国・中国ではそのスケールも超弩(ど)級である。豊かな生活を送りたければ、やはり特権階級たる共産党員になるしかないか。

プロフィール
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=大幅安、雇用統計・エヌビディア決算を

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロ・円で上昇、経済指標の発

ワールド

トランプ氏、医療費削減に関する発表へ 数日から数週

ワールド

再送EU、ウクライナ支援で3案提示 欧州委員長「組
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story