最新記事

アフガン情勢

タリバン、アフガニスタン国家運営に苦戦 経済混乱・人道危機に懸念

2021年9月2日(木)12時38分
アフガニスタン、カブール市内のタリバン兵士

米軍が撤収を完了したアフガニスタンでは、イスラム主義組織タリバンが国家機能の維持に苦戦しており、海外では人道危機への警戒感も強まっている。写真は、カブール市内のタリバン兵士。2021年9月1日に撮影。(2021年 ロイター/West Asia News Agency via REUTERS )

米軍が撤収を完了したアフガニスタンでは、イスラム主義組織タリバンが国家機能の維持に苦戦しており、海外では人道危機への警戒感も強まっている。

タリバンは首都カブール制圧から2週間が経過した現在も、新政権の樹立や統治方針の発表には至っていない。行政に空白が生じる中、物価は高騰し、銀行には現金を引き出そうとする人々の長い列ができている。多くのオフィスや店舗も休業が続いている。

武装したタリバン戦闘員がカブールをコントロールしているが、外国人や西側諸国に協力してきたアフガン人が多数出国したことを受け、タリバンは病院や政府組織の運営維持に苦戦している。

銀行関係者によると、タリバンが任命したアフガン中央銀行のハッジ・モハンマド・イドリス総裁代行は、タリバンが金融システムの完全な稼働を望んでいると銀行側に伝えたが、そのための資金をどのように供給するかについては詳細をほとんど明らかにしていないという。

中東のテレビ局、アルジャジーラは、現在停止されているカブール空港の運営再開について話し合うため、タリバンの要請でカタールの技術専門家が現地入りしたと報じた。

アフガンの隣国でタリバンと緊密な関係を持つパキスタンの外相は、アフガンで数日中に新たな「コンセンサス政府」が樹立されるとの見方を示した。

こうした中、北東部パンジシール州では、地域武装勢力や旧政府軍のメンバーがアフマド・マスード氏の指揮下でタリバンへの抵抗を続けている。タリバン幹部は反対派勢力に武器を捨てて交渉するよう呼び掛け、「アフガニスタン・イスラム首長国は全てのアフガン人の国だ」と強調した。

物価高騰

タリバンにとって当面の急務は経済崩壊の回避だ。アフガン中銀が主に海外に保有している約100億ドルの資産にタリバンが早期にアクセスできる可能性は低い。

タリバンは銀行に営業再開を命じたが、1週間当たりの現金引き出し額を厳しく制限している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア「H20」は安全保障上の懸念=中国国営

ワールド

中国、米にAI向け半導体規制の緩和要求 貿易合意の

ワールド

北朝鮮、軍事境界線付近の拡声器撤去を開始=韓国軍

ワールド

米、金地金への関税明確化へ 近く大統領令=当局者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 2
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋肉は「光る電球」だった
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 5
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 6
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 7
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 8
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 9
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 10
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中