最新記事

嫌韓の心理学

保守がネット右翼と合体し、いなくなってしまった理由(古谷経衡)

THE COLLAPSE OF THE CONSERVATIVES

2019年10月11日(金)18時10分
古谷経衡(文筆家)

magSR191011furuya-4.jpg

HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

チャンネル桜が保守とネット右翼をブリッジさせたことにより、保守側にも変化が訪れた。それまで封書、機関紙、ファクスがコミュニティー間の通信ツールだったものが、一挙に電子化・近代化されたのである。産経新聞や正論に寄稿しても、熱心なファンから激励の封書やハガキが1週間に数通来るのが関の山だった保守業界に、動画へのコメントという形で大量の肯定的反応が「瞬時に」「即座に」あふれ返る。

保守の古老たちは有頂天になる。それまでフジサンケイグループの資本関係におもんぱかってネット右翼と距離を置いていた論客たちが、ネットからの反応に狂喜乱舞し、フジテレビ以外の地上波局、産経新聞以外の大新聞への批判、そして嫌韓の大合唱に手を染めていくようになる。それが「NHK攻撃」(この流れから2013年にNHKから国民を守る党が生まれた)、「朝日新聞、毎日新聞攻撃」である。

こうして初手で、ネット右翼の動きを冷ややかに、冷笑的に見つめていた保守は、あっという間にネット右翼と融合し、差別を区別と言い直して、根拠のあるなしにかかわらず、嫌韓の渦の中に合流していったのである。

爾来、10年がたち、「保守」と「ネット右翼」は完全に一体となり、もはやその両者に特段の差違を見つけ出すことは難しい。唯一業界内で変化があったとすれば、かつて黄金時代を築いたチャンネル桜が事実上の内紛を起こしてCS放送から撤退し、代わってチャンネル桜の何百倍、何千倍という資本力を持った化粧品大手のDHCがCS放送局「DHCテレビ」を保有し、そこに視聴者層のほとんどが移行したことである。

現在、嫌韓を叫ぶ人々は2012年の私の調査時点からほとんどそのままスライドしている。つまり平均年齢は38.15+7で45.15歳。アラフィフが主力である。日本全体がそうであるように、嫌韓層もまた高齢化しているのだ。「あいちトリエンナーレ」で慰安婦像のアート展示に激高し、「ガソリンを持っていく」などと書き込みをして、威力業務妨害で警察に逮捕された2人の年齢はそれぞれ59歳と64歳。まさにネット右翼の中核層である。

本来の「保守」は絶滅危惧種もともと高齢者のサロン的要素があった保守と、それよりもやや若い(とは言ってもアラフォー)層を主体としたネット右翼が合体したことにより、嫌韓の主軸は高齢者となり、中高年で嫌韓が好発している。朝日新聞の調査でも、世代別に韓国への感情を聞いたところ、加齢すればするほど「嫌い」のパーセンテージが増える。「嫌韓はネット右翼の専売特許」どころか、「嫌韓は中高年男性の専売特許」と言える。日韓両国の若い層(30代以下)はお互いに双方の文化に好意的であり、嫌韓どこ吹く風である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国・オランダ貿易相、半導体企業ネクスペリア巡り協

ビジネス

欧州で中古EV販売が増加、ガソリン高が追い風に

ビジネス

英消費者信頼感、3月は昨年4月以来の低水準 予想は

ワールド

米国、台湾向け原油・LNG供給を拡大へ=駐台代表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 3
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRANG』に託した想い、全14曲を【徹底分析】
  • 4
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 5
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 6
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 7
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 8
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中