最新記事

アメリカ政治

中間選挙へ共和党候補が警戒する「トランプ」という踏み絵

2018年10月16日(火)17時15分

10月5日、トランプ米大統領について沈黙を守っている共和党現職議員の多くは、大統領の政策法制化の大半を支持しているが、表立った支持は表明しておらず、デリケートな綱渡りを続けている。写真は、今回の中間選挙では民主党候補に献金と票を投じるという共和党支持者のロバート・エリスさん。ネバダ州で8月撮影(2018年 ロイター/Sharon Bernstein)

米共和党のレオナルド・ランス下院議員は、党の地盤である選挙区から再選を目指すが、同党出身の大統領について言うことはほとんどない。

ランス議員の選挙向けウェブサイトには、移民や税などの争点に対する自身の姿勢が記されているが、そこにはトランプ大統領に対する支持を示す記述はない。

議員のツイッターやフェイスブックのアカウントでも、今年に入り、大統領を称賛するコメントを控えている。トランプ氏に言及する場合は、むしろ自身との違いを鮮明に打ち出しているという。

輸入関税を巡る大統領権限に対する制限や、引き離された不法移民親子の再会を求める超党派法案を共同提起しているランス議員は、銃規制への支持についても大々的に表明している。

トランプ大統領と距離を置こうとしているわけではない。「意見が一致する分野はあるが、異なる分野も指摘したい」とランス議員はロイターに語った。穏健保守の選挙区では、同議員の「超党派」的なアプローチは「選挙区民の大半の意見と一致」すると言う。

ランス議員の手法は、広く現実を映し出すものだ。

11月の中間選挙は、トランプ大統領への信任投票とみなされている。同議員が出馬するニュージャージー州北部の共和党支持基盤である裕福な郊外地域では、大統領への支持はそう高くはない。

これは、全米の他の似たような選挙区において、勝つために必要な穏健・保守有権者の票を獲得したい共和党候補者が直面する課題でもある。

共和党支持層におけるトランプ大統領の支持は根強い。

ロイター/イプソスの世論調査によると、共和党支持で実際に投票に行くとみられる有権者のトランプ支持率は82%に上る。だが、大卒や高収入な共和党支持者からの支持率は低い。2016年の大統領選でもこうした有権者が支配する選挙区の多くでトランプ氏は不調だった。

幻滅を感じている一部の共和党支持者は、トランプ政策、とりわけ移民や環境問題、ロシアとの関係に異を唱えていることが、世論調査で明らかとなった。大統領の敵対的で、無礼な態度にも批判的だ。

民主党が下院の過半数を握る、という観測が世論調査や専門家の間で優勢となりつつある現在、激戦区の共和党候補は1票も無駄にはできない。そして、トランプ大統領に対してどの程度の距離を保つべきか、ということが何にも増して大きな課題として浮上している。

多くの共和党候補にとって、その答えは「沈黙を守る」ことだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米フェデックス、6─8月期利益が予想上回る コスト

ワールド

米下院議員、中国の希土類規制解除なければ航空機発着

ワールド

高市氏、午後2時半から自民総裁選政策で記者会見

ワールド

プーチン氏、コザク大統領府副長官を解任 長年の側近
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中