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高齢化ニッポンを支えるフリーランスという働き方

2018年3月9日(金)16時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

会社に依存し続けて個人での稼ぎ方を知らない人は、定年後に苦労することになるだろう。副業をして、どこででも通用する汎用性のあるスキルを身に付けることも重要だ。収入を増やし、新たなスキルを習得する観点から、政府も正社員の副業を推奨する方針を示している。

しかし、日本の労働者の副業実施率は低い。<図1>と同じISSPによると、過去1年間に副業を実施した就業者の割合は11.0%で、アメリカ(31.5%)など他の先進国と比べると低くなっている。副業の解禁を促すべきだろう。

共働き世帯が増加し、人口の高齢化が進むなかで、フリーランスという自由で柔軟な働き方への要請は高まるだろう。業務を委託する側にしても、高度なスキルを切り売りしてもらえるのは有難い。専門人材を雇用するのは莫大なコストがかかるが、必要な時の業務委託ならばそれを大幅に削減できる。

ただ、クライアントの企業との力関係から、フリーランスは不利な立場に立たされやすい(競合会社からの受注禁止、曖昧な口約束の契約、報酬不払いなど)。2月に開かれた公正取引委員会の有識者検討会では、フリーランスに無理な条件を押し付けた場合は独占禁止法違反にあたるとする初の判断が示された。フリーランスを保護する動きが出ている。

20世紀はサラリーマンの時代だったが、情報化・高齢化社会の21世紀は「フリーランスの時代」になるかもしれない。

<資料:「Work Orientations IV - ISSP 2015」、
      総務省『国勢調査報告』(2015年)

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