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空爆から救出されたオムラン君、回復してもつきまとう独裁者の影

2017年6月8日(木)19時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

プロパガンダだと批判するプロパガンダ?

だが、オムランの怖い話はまだ終わらない。

独裁者のアサド大統領が、空爆直後の動画も最近の動画も、オムランの物語は反体制派のプロパガンダだと非難しているからだ。

そもそも最初の動画は、反体制派活動家団体「アレッポ・メディアセンター(AMC)」が人命救助活動に携わるボランティア団体「ホワイト・ヘルメット」の活動促進を目的に公開したもの。

「アレッポの惨状」が世界中に拡散されると、アサドはテレビに出演するたびに「偽装映像だ」とか「反体制派のプロパガンダだ」と反論し続けた。

(人権メディアAJ+のインタビュー)


オムラン君の父親モハマド・へール・ダクニシュもアサドに同調する発言をしている。「救助されたオムランは勝手に連れて行かれた。私はまだ2階にいたし、私の意思は無視された」とイラン国営テレビのインタビューで語った。

ニューヨークタイムズによれば、シリア、ロシア、イラン、レバノンで放送された番組(シリア国営テレビ)では父親は、「AMCが空爆を操作し、同意なしに息子を撮影した」と言った。

オムランと家族が、アサド政権から圧力を受けているかどうかはわからないが、家族が住むアレッポがアサド政権の支配下にあるのは事実だ。

シリアの著名な活動家アブドゥル・カフィ・アルハマドはこう問いかける。「オムランの父親がアサド政権に『ノー』を言えると思いますか?」

【参考記事】「ホワイト・ヘルメット」を無視するノーベル平和賞の大罪
【参考記事】シリアの子供たちは、何度化学兵器で殺されるのか


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