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メンヘラも自殺も「若い女の子」に限った問題じゃないし、SNSをやり玉に上げるのは止めるべき

2018年08月21日(火)17時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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貧困家庭の親が長時間労働すれば質の低い家族時間を過ごす子供も増える(写真はイメージ) Imgorthand-iStock

貧困と孤独とメンタルと......

2010年は緊縮経済の始まりの年となった。同年に就任した当時のデービッド・キャメロン英首相は、自身が掲げていた財政赤字削減の公約を実行するために福祉予算などを大幅に削減。この結果、しわ寄せを受けた貧困層の生活状況は、より悪化した。

ボランティア団体やNPOが貧困層への支援に力を入れることになったが、パンの施しを受ける列に並ぶことと心の病は、どうやら大きく関係しているようだ。実際、現在イギリスに暮らす410万人の子供たちが貧困に苦しんでおり、うち50万人は食料バンクに頼らなければならない。(英メトロ紙

さらに悲しいことに、オックスフォード大学の調査によると、この数字は2020年まで増加することになっている。そして、貧富の差は「永久に分断される」としている。何百万もの家族が財政難に陥っているということは、多くの親が長時間労働を強いられ、質の低い家族時間を過ごしていることを意味する。

地方自治体の資金提供により成り立っていたスポーツセンター、(団体組織による)社会奉仕、図書館の閉鎖は、コミュニティの喪失にも繋がった。

「メンタルを病むのは女性」と示唆するかの情報

また、この話題で言及しておきたいポイントがもうひとつ。文頭で触れた通り、研究や調査は、女性ばかりをフォーカスする形で実施されている。デボン記者に言わせると、「ジェンダーの区別は、本題から目を逸らさせるための紛らわしい情報」だ。

日本の状況からも、性別を超えたテーマであることは明らかだ。今年6月に厚生労働省が発表した「自殺対策白書」は、若い世代の自殺が「深刻な状況」と明記している。15~39歳の各年代の死因のトップは「自殺」。男女別では、男性は25~29歳が51.2%、女性は20~24歳が41.8%。15~34歳で最多の死因が自殺となっているのは、主要7カ国の先進国では日本のみというゆゆしい結果となった。

【参考記事】殺人より自殺に走る「内向型」日本人は政府にとって都合が良い

「少女の方が多く伝統的なリストカットという方法で自傷行為をする一方、少年は他人に悟られない方法で自身に痛みを課す傾向がある。例えば、勝つことができないとわかっている人に戦いを故意に挑むことなど」と、デボン記者は言う。

若い女性が自殺を試みるのと同様に、イギリスでも35歳以下の若い男性の一番の死亡原因もまた自殺だ。デボン記者は「少女ばかりが苦しんでいるというのは誤りで、単に兆候が人によって様々なかたちで現れているだけ」と指摘する。

つまり、メンタルの異常や若年層の自殺は、性別の問題でも、そして責めるべきはインターネット、特にSNSでもない。英ザ・ウィーク誌の言葉を借りれば、「精神疾患への道筋は様々であり、精神衛生上の問題がSNSだけに起因することを示唆するのは、過度の単純化だ」

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