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地産地消を入り口に、キャンパーを地域観光に導くテロワールキャンプ

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2023年3月27日(月)11時00分
文=西山 亨 写真=野田 真

山崎繁幸氏

TerroirCAMPは観光活性化のためのアクション

サービスの名称に、その土地や土壌の個性を表わすテロワールという、ワイン好きには知られる言葉を使ったのには理由がある。事業を構想する際に山崎氏が注目したのは、キャンプは地域振興に結びつきにくいという現状だった。

その理由は、「キャンパーはキャンプ場の外に出ない。食材を現地で調達しない(現地で新鮮な食材を調達できる方法が分からない)。キャンプは観光としての歴史が浅く、観光産業として発達していない」などが挙げられる。

そのため、⽇本の伝統や文化、⾵⼟、歴史などを発信することをミッションとするEngiとしては食だけでは不十分と判断。地域振興を促進させるために、「顎(食)、足(交通)、枕(宿)、体験(アクティビティ)」という4つのポイントを設定した。

「その土地ならではの食や伝統、文化、⾵⼟、歴史といった個性を楽しむのが観光の本来の目的。つまりTerroirCAMPは、地方の観光を確立させるためのアクションであり、地元の食材を食べてもらうのは一部分にすぎない」と、テロワールという言葉を使った狙いを説明した。

現在、TerroirCAMPは鳥取県と茨城県、静岡県で展開しているが、体験(アクティビティ)については企画段階にある。インバウンドの回復を図るために観光庁が進めている観光再始動事業を活用するなどして、外国人のニーズが高い自然文化体験に関するプログラムを各自治体と共に開発中。キャンプ場をベースに、サイクリングやカヤック、森林セラピー、酒蔵や伝統工芸の見学といったアクティビティを予定している。

BtoB事業で市場が膨らむキャンプ場ビジネス

現在の日本におけるアウトドアを取り巻く状況は、1990年代の第一次キャンプブームに次ぐ第二次ブームと言われている。もともとキャンプはボーイスカウトやガールスカウトといった団体による、教育的な側面をもつ野外活動として普及。第一次ブームの際に自家用車でアクセスできるオートキャンプが人気になったことなどで、観光やレジャーとしてキャンプを楽しむ層が誕生した。

しかし、ブームであるのにも関わらず、「キャンプ場は入場料しか取らない。テーマパークが、入場料以外に飲食やお土産で売上を倍増させていることを考えると、キャンプ場の付加価値を上げることは十分にできる。ただ、キャンプ場の意識改革が追いついていない」と、山崎氏は問題点を指摘する。

そこで、2023年5月頃にEngiが主体となり、一般社団法人テロワールキャンプ協会を設立する予定だ。自治体やキャンプ場の事業者と連携してコンソーシアムを立ち上げ、外国人を含む観光客をキャンプ場へ誘致する活動を進めていく。「アイデア次第でキャンプ場は付帯サービスで売上を伸ばすことができる。売上の大半が入場料という、今のままではもったいない」と、横の繋がりも強化する。

さらに、キャンプ場をプラットフォームとしたBtoB事業にも取り組む。具体的にはキャンパーに対して商品を売り込みたい企業のプロモーションや、キャンプ場でのイベントなどを考えている。

「キャンプ場の反応は、積極的に変えていきたいところとそうでないところなど、さまざま。前職のぐるなび時代、2000年代初頭はクーポン紙の全盛期で、飲食店にインターネットサービスを営業してもなかなか理解してもらえなかった」と、当時と今の状況が似ていることを指摘する。

しかし、その後はデジタル化が急速に進み、キャンプ場自身も変わらなければいけないことは理解していることが当時との大きな違いだという。「顎(食)、足(交通)、枕(宿)、体験(アクティビティ)」の4つ条件が満たされたとき、キャンプ業界にもパラダイムシフトが起きることが期待される。


山崎繁幸氏山崎繁幸(やまざき しげゆき)
株式会社Engi 取締役CSOクリエイティブディレクター。1979年愛知県生まれ。飲食店情報サイトを運営する株式会社ぐるなびに13年間在籍、全国の生産者を飲食店のシェフにつなぐ事業に携わるうちに、BBQ TERRACEのビジネスモデルを構想し、退社。2016年にBBQ TERRACE1号店を静岡市内に開業。現在は日本全国のキャンプ場と地域の農家を繋ぐプラットフォーム「TerroirCAMP」を展開中。

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