最新記事

金融危機

ウォール街の「真犯人」を捜せ

2009年12月1日(火)15時54分
マイケル・ハーシュ(ワシントン支局)

 証券詐欺の罪に問われた投資銀行ベアー・スターンズの元ファンドマネジャー2人が11月10日、無罪の評決を受けた。ウォール街はさぞ安堵したことだろう。これでサブプライム危機に絡むめぼしい訴追案件はなくなった。

 それでもウォール街の心配の種は残っている。金融危機調査委員会による調査だ。同委員会は危機の原因を調査するために連邦議会が5月に設置したもので、召喚権限を持つ。

 フィル・アンジェリデス委員長は「明らかに腐敗が背景にある」と、真相解明への決意を本誌に語った。「(ウォール街の人々は)ボーナスをもらうために列を成している。彼らは一瞬たりとも反省していない」

 問題は真相解明がいつになるかだ。設置から6カ月たっても人員がそろっていない。10年12月15日までに広範な最終報告書を提出しないといけないことを考えると、「心配だ」と委員の1人ピーター・ウォリソンは言う。

 委員会は先週、ガイトナー財務長官やバーナンキFRB議長に聞き取りを行ったが、全体会議はまだ数回しか行われていない。アンジェリデスは、ウォール街の多くの弁護士と対決することになるため、「全米から優れた才能を持つ人物を探すのに膨大な時間をかけている」と言う。

 委員会内部も割れている。危機を生んだ大きな流れを調査して包括的な報告書を作るか、最も悪質な当事者に焦点を当てるか。民主党員のアンジェリデスらがウォール街の罪を強調したい一方で、副委員長のビル・トーマスら共和党員たちは規制当局の失態にも光を当てたいと考えている。

 アンジェリデスもトーマスも12月までに「動く」と約束しており、進展について問題視するのは時期尚早だと言う。

[2009年12月 2日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

FRB、5会合連続で金利据え置き 副議長ら2人が利

ワールド

銅に50%関税、トランプ氏が署名 8月1日発効

ワールド

トランプ氏、ブラジルに40%追加関税 合計50%に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中