コラム

女子大生セックス動画公開を恥じる、中国の「国家の品格」

2025年08月01日(金)17時30分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国

©2025 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<外国人とのセックス動画を海外SNSで勝手に公開された中国人女子大生が、中国の大学から実名を晒され退学処分になった。理由は「国格を辱めたから」。中国人が気にする「国格」とは何か>

最近、21歳の中国の女子大生が外国人男性と一夜限りの関係を持ち、その様子を録画されて海外のSNSにアップされた。録画が盗撮ならプライバシーを侵害された女子大生が被害者であり、責められるべきは外国人男性だ。場合によっては法的責任も追及すべきだろう。しかし、女子大生が所属する大連の大学はすぐ彼女の実名を公表し、「外国人との不適切な交際により『国格』を辱めた」と、退学処分にした。

「国格」とは国家の品格、つまり国家の体面と尊厳である。この時期、甘粛省の幼稚園で200人以上の子供が鉛中毒になり、杭州市の水道水では糞便汚染が疑われる変色・悪臭事件が起きた。これら国民生活に直結する重大な社会事件は明らかに国家の体面と尊厳を損なっているが、誰もこれを「国格を辱めた」とは考えない。


これは、「中国なりの国家の品格」なのだ。その基本原則は、まず「家の恥を外に出すな」。つまり、悪いことをしても構わないが、外部者、特に外国人に知られてはいけない、という考え方。もう1つは、指導者の権力や地位を脅かさないこと。何か問題が起きたとき、指導者は「国家の品格を辱めた」として下級の者を厳しく処罰し、責任を切り離して自分を守る。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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