SPECIAL ADVERTISING SECTION

PHVが拓くこれからのモビリティ

vol.5
対談 トヨタ自動車株式会社 製品企画本部 ZF チーフエンジニア豊島浩二さん × 国際ジャーナリスト小西克哉さん
パワートレインの未来像

2015年12月21日(月)10時00分

小西克哉さん

──長いスパンでエコカーの未来を展望すると、究極的にはFCVにシフトしていくと考えられるのでしょうか。
豊島 走行中にCO2を排出しないという観点からは非常に有力です。ただ、普及には水素ステーションなどのインフラ整備が必要であることを考えると、将来FCVが主流になるとしても、まだ先のことになるでしょう。それまでの間、低炭素社会の実現に貢献できるエコカーとして重要な役割を担うのに適しているのが、HVの進化形であるPHVなのではないかと私は考えています。
小西 1997年に初代プリウスがリリースされたときは、「車はここまできたのか」と思いましたが、あれは次世代エコカーの出発点にすぎなかったんですね。
豊島 霊長類の系統がいろいろな種に分化したのと同じで、PHVやEVやFCVも、ハイブリッドという系統から派生したそれぞれの形態だという捉え方ができます。最終的に"ヒト"に該当するのが"FCV"なのかどうかは別として、エコカーは今後もさまざまな進化の過程をたどることになるはずです。
小西 FCVが真のゼロエミッションを実現するとしても、そこに至るには技術的なブレイクスルーがいくつも必要だということですね。それが10年後なのか50年後なのかはわかりませんが、それまでは電気や化石燃料に頼らざるを得ない。そのような状況を踏まえると、日本にはPHVが「適時・適地・適車」であるという豊島さんのお考えがよく理解できます。

──PHVのさらなる普及に向けて、クリアされなければならない課題は何ですか。
豊島 まず電気による航続距離を伸ばすための電池技術の開発です。そこでは、電池の容量を増やせば充電時間が延びてしまうという相反する問題も解決されなければなりません。また、充電スタンドでの「充電待ち渋滞」が起きないよう、できるだけ電池に負荷をかけずに急速充電する技術の確立も必要です。多くの方に利用していただくには、高価な電池を安価にすることで、車両価格を低減させることも必須条件となりますね。
小西 EVモード(※1)の走行距離は当然長くなることが望まれますが、現在の26.4km(※2)という数値は、少なくとも日常での移動距離が比較的短い日本の都市部では、毎日の通勤にも使える実用性を十分に備えていると思います。もう1つ私が大きく注目しているのは、HVやPHVなど電気を利用する車が、災害による停電時などの非常用電源となり得るという点です。
豊島 仮に一般家庭が日常で使用する電力(約10kWh)で換算した場合、フル充電、ガソリン満タンのプリウスPHVであれば、約4日分に相当する電力を供給できることになります。
小西 東日本大震災以後は、各家庭が非常用電源を確保しておくことが課題となっていますが、車がその役割を担ってくれるとしたら心強いですよ。
豊島 プリウスやプリウスPHVは最大1500W(※3)の電源を供給できます。PHVが75万台あれば最新鋭の発電所1基分に相当し、自然災害の多い日本が電気の備蓄をしておくことにも貢献できると思っています。
小西 なおかつ普段の利用では、エコロジーを実践できるわけですしね。
豊島 プリウスはこれまで国内・海外で累計340万台以上(※4)普及していますが、そのCO2排出抑制効果は、東京都面積約3倍の森林(6億本相当、※5)に相当すると言われています。ハイブリッド車を選ぶことで、植樹をするのと同じ効果が得られるということを、多くの人に理解していただけるとありがたいですね。

MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 5

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 6

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 7

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 8

    台湾を威嚇する中国になぜかべったり、国民党は共産…

  • 9

    トランプ&米共和党、「捕まえて殺す」流儀への謎の執…

  • 10

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 5

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中