コラム

中国のアフリカ人差別でばれたコロナ支援外交の本音

2020年04月27日(月)20時25分

つまり、「世界最大の途上国」を自認する中国にとって、数の多いアフリカとの良好な関係は国連(その一部にはWHOも含まれる)などでの発言力を保つうえで欠かせない。だからこそ、中国はアフリカの不満を力ずくで抑えるより、歓心を買うことに傾いているのだ。

この状況のもと、アメリカ政府が4月24日、ケニアや南アフリカに医療支援を約束したことは、アフリカを「こちら側に」引き戻すための一手といえる。とはいえ、先進国からの援助は決して多くないため、アフリカ各国の政府にとって中国と対決姿勢を保つことは難しい。

人種差別はアキレス腱になるか

ただし、医療外交をテコに勢力の拡大を目指す中国にとって、最大のウィークポイントは人種差別にある

アフリカでは一般的に、中国との取り引きに利益を見込めるエリート層ほど中国に好意的で、ブラック企業さながらの中国企業に雇用される労働者や、中国企業の進出で経営が苦しくなった小規模自営業者ほど中国に批判的だ。

そのため、海外で中国人が巻き込まれた暴行などの事件の約60%はアフリカで発生するなど、コロナ蔓延の前からアフリカでは「中国嫌い」が広がっていたが、中国における人種差別でこれは加速している。例えば、ナイジェリアの医師会は中国の医療チームの入国に反対している。

国によって温度差はあるものの、「中国嫌い」が加速するなかで中国が援助を加速させれば、人々の反感は各国の政府にも向かいかねない。それによって反中的な政府が誕生したりすれば、中国にとって逆効果になるため、支援をひたすら増やすことも難しい。

こうしてみたとき、中国で広がる人種差別は、まわりまわって中国外交の足かせにもなっているといえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

現状判断DIは前月比0.1ポイント低下の47.6=

ワールド

タイ首相が近く連立協議開始へ、保守派与党躍進で 軍

ワールド

米印貿易協定、二輪車ハーレーの関税免除 EVテスラ

ビジネス

スペースX、月面での「自力発展都市」建設を優先=マ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 5
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 6
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 9
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 10
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story