コラム

人間の内なる闇と光をホラー映画『来る』に見る

2022年09月16日(金)11時35分

田原夫妻だけではなく、登場人物のほとんどが内面に抱える闇と光が、物語の重要なモチーフとなる。

つまり対位。それは闇と光だけではない。現在と過去、子供と大人。出産と死。穢(けが)れと浄(きよ)め。そしてギャグとホラー。あらゆる対位が弁証法的に物語を紡ぐ。神官と巫女(みこ)、僧侶と霊媒、科学者とユタ(沖縄の霊媒師)までが集結して「あれ」と対峙するラストは、まさにカオスだ。

オムライスは何の暗喩なのか。ここにアニメを導入する演出も秀逸だ。続編を望む。

magmori220916_kuru2.jpg『来る』(2018年)
監督/中島哲也
出演/岡田准一、妻夫木聡、黒木 華、小松菜奈

<本誌2022年9月13日号掲載>

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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