David Lawder

[ワシントン/ロンドン 19日 ロイター] - 米財務省は19日、期間が長めの名目利付債を対象とした流動性支援の買い入れオペの規模を、1回当たり20億ドルから少なくとも40億ドルに倍増すると発表した。これを受け、30年債利回りは19年ぶりの高水準付近から急低下した。世界の投資家を不安にさせていた数週間にわたる利回り上昇に少なくとも一時的に歯止めがかかった格好。

30年債利回りは約10ベーシスポイント(bp)低下し、5.184%を付けた。1日の低下幅としては6月下旬以来の大幅なものとなった。18日には、インフレと政府債務の高水準を巡る投資家の警戒感から、30年債利回りは19年ぶりの高水準となる5.34%を付けていた。

対象は残存期間10─20年債と20─30年債のセクターで、期間は9月9日─11月4日。従来計画されていた1回当たり20億ドルからの増額となる。

18日には20年債と30年債を対象とした20億ドルの買い入れオペが予定通り実施されたにもかかわらず、利回りは上昇していた。

トランプ米大統領は19日、記者団から米国民が債券市場の変動を懸念すべきかどうか問われ、「いや、そうは思わない」と返答。懸念する必要はないとの認識を示した。

CIBCのG10為替戦略責任者、ジェレミー・ストレッチ氏は「ここ数日、債券市場の長期ゾーンでは明らかに売りが進み、他の資産クラスへの波及という点で幾分問題になりつつあった。今回の措置は、米財務省が債券市場で起きていることを認識し、市場への圧力を抑えるために政策を調整する用意があることを示している」と述べた。

シティの米ドル/加ドルスワップ取引グローバル責任者、ダン・ゴットランダー氏は「今回の措置は長期ゾーンに大きな影響を与えるだろう」と指摘。ただ、その結果として米財務省は代わりに短期債の発行を増やす可能性があるとも述べた。

「明らかに財政赤字は変わらない。長期債を買い戻すのであれば、依然として発行は必要となる。財務省は短期証券をより多く発行するか、あるいは5年債から10年債のセクターでも発行を増やすかもしれない」と語った。

財務省は声明で「今回の買い入れオペ規模の拡大は、市場参加者から安定した強い需要がある長期セクターで、より手厚い流動性支援を提供したいとの財務省の意向を反映したものだ。長期債の買い入れオペでは、質の高い売却申し込みを日常的に大量に受けている」と説明した。

市場アナリストは、財務省の措置は、債券市場の圧力が一段と深刻化し、借り入れコストの増大や住宅ローン金利の高止まり、より広範な金融市場の混乱を招きかねないという懸念を反映していると指摘した。

ドイツDZバンクのシニアアナリスト、レネ・アルブレヒト氏は「長期ゾーンで利回りが5%かそれ以上になる痛みを彼らは恐れていると思う。政府にとって金利コストが上昇するだけでなく、民間部門にとっても同様だからだ。中間選挙まであと3カ月しかない」と述べた。

指標となる10年債利回りも6bp低下の4.65%となった。アルブレヒト氏は「当局は足元の利回り上昇を抑えるために、政策手段を持ち出さざるを得なかった」と語った。

今回の増額は、ベセント米財務長官が今月市場の動きに対抗して動いた2度目の措置となる。ベセント氏は8月1日、対ドルで約40年ぶりの安値に下落した円相場の反転を狙い、日本と協調して為替介入に踏み切っていた。

エバコアISIのアナリストは「ベセント氏は再びその戦術的手腕を示した。流動性が薄く、利回り上昇を視野に入れた一方向の取引が一服していた日に、買い入れプログラム拡大というサプライズ発表で債券の売り持ち筋を攻撃した」と指摘。ただ、この措置が持続的な効果を持つかどうかには疑問を呈した。

また、「今回のオペはファンダメンタルズの面ではほとんど何も変えない。特に、巨額の政府赤字に加え、ハイパースケーラー債の津波を賄う必要性は変わっていない。オペの規模拡大は、米国債市場の資金フローと比べれば小幅だ」と述べた。

ジェフリーズの米国担当チーフエコノミスト、トーマス・シモンズ氏は、今回のサプライズ発表は「規則的で予測可能な」債務発行に関する一貫したコミュニケーションという財務省の伝統を覆すものだと指摘。「場当たり的な」印象を受けると述べた。

20億ドルの増額は、17日時点で32兆2000億ドルに上る米国債市場や、7月31日時点で約5兆5000億ドルに上る20年債・30年債の残高と比べればごくわずかだ。償還前の中期国債(2─10年で発行)は16兆2000億ドルあった。政府間保有分を含む公的債務全体は、17日時点で39兆9900億ドルとなり、節目とされる40兆ドルの大台を目前にしている。

現在予定されている次の20年債・30年債の買い入れオペは9月24日、10─20年債の買い入れは9月10日となっている。財務省は今月初めの四半期定例入札発表で、8月6日から11月5日までに全ての年限で最大690億ドルの米国債を買い戻すとしていた。この期間には20─30年債の買い入れがさらに3回、10─20年債の買い入れが4回予定されており、少なくとも140億ドルの流動性支援が追加され、買い戻し規模は最大830億ドルに達する。

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