コラム

なぜドイツで極右AfDが躍進しているのか──5つの理由と、東側ブロック崩壊35年で「反動の時代」

2025年02月20日(木)16時35分

なぜ支持基盤は東ドイツ地域にあるのか

AfDの特徴は、旧東ドイツの地域で支持が高いことである。東西で対照をなしている。州議会選挙では、2024年9月、東部テューリンゲン州で、第2次世界大戦後初めてAfDが第一党となった。隣の東部ザクセン州でも2位につけ躍進した。どちらも冷戦中は、東側のドイツ民主共和国に属していた地域だ。

afd_map.jpg

2024年欧州議会(EUの)選挙の結果 By Erinthecute-Own work,CC BY-SA 4.0(日本語は筆者による)

なぜAfDは東で強いのだろうか。

まず挙げられるのが、経済レベルの差である。東西統一から35年経った今でも、東ドイツ地域は、ドイツ全体のGDPの中で16%しか占めていない。前述のテューリンゲン州は、ドイツ16州の中で一人あたりのGDPが最も低い州だ。

そして東ドイツ地域の多くの人が、自分たちを「2級市民」と感じているし、西ドイツの人にそう思われていると感じている。

東ドイツ地域では、政治や社会の要職には、西側からやってきたドイツ人が就くことが多く、自分たちの地域の人が代表になっていない不満も根強くあるという調査結果がある。

彼らは自分たちの権力や権利を奪われていると感じているため、西側の体制に反旗を翻す極右政党に投票すると考えられる。

また、東ドイツ地域の多様性の低さも挙げられる。

1970年代から80年代にかけて西ドイツの都市部では、トルコやモロッコなどからの出稼ぎ労働者の流入により文化的多様性が高まった。でも東ドイツではほぼ均質な状態が保たれていたと、米NGO「Rise to Peace」のテロ対策研究員であるカミール・アンバーガー氏は指摘している。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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