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アングル:米政府機関閉鎖終了が視野に、投資家は安堵 今後発表のデータを注視

2025年11月11日(火)10時55分

写真はニューヨーク証券取引所で働くトレーダーら。11月10日、ニューヨークで撮影。REUTERS/Brendan McDermid

Lewis Krauskopf

[ニューヨーク 10日 ロイター] - 米政府機関閉鎖が終結に向かう可能性が見えてきたことで、閉鎖による経済への影響拡大を懸念していた投資家は安堵し、経済成長や金利動向の見通しを探るべく、発表が延期されていた一連の経済データの公表を注視している。

10日の米市場は連邦政府機会再開の見通しを好感。米議会上院が9日遅くに妥協案に合意し、10月1日から続いていた混乱の終結に向けた法案が前進したとの報道を受けて、株式市場は先週の下落分の一部を取り戻した。

投資家の間では、米史上最長となった今回の閉鎖が長引けば、年末商戦期に向けて旅行需要や個人消費を圧迫するとの懸念が強まっていた。

エドワード・ジョーンズのシニアグローバル投資ストラテジスト、アンジェロ・クルカファス氏は「政府機関閉鎖は長引くほどに米経済への悪影響が一段と深刻になっている。最悪のシナリオは閉鎖が感謝祭まで続くことだったが、そうならなかったことで逆風の1つが和らいだ」と述べた。

<経済と流動性巡る不安が後退>

株式市場の反発を主導したのは、割高感への懸念からこの数日特にきつい売りを浴びていたハイテク株だ。政府機関再開に伴う楽観論の高まりは外為市場でも見られ、豪ドルなど高リスク通貨が上昇したが、一方で安全資産の米国債は売られて利回りが上がった。

投資家は当初、政府機関閉鎖による経済への打撃は限定的で、政府機関が再開して職員が職場に戻れば失われた支出の多くは取り戻せると見込んでいた。しかし最近は懸念を強めるような兆候が現れ始め、例えば米ミシガン大学が7日発表した11月の消費者信頼感指数(速報値)は約3年半ぶりの低水準に落ち込んだ。

マニュライフ・ジョン・ハンコック・インベストメンツの共同チーフ投資ストラテジスト、マシュー・ミスキン氏は「この数週間に政府機関閉鎖が実体経済にかなり影響を及ぼし始めていた。閉鎖終了は年末にかけて景気を下支えし、下振れリスクを最小限に抑えるだろう」と期待を示した。

政府機関再開は短期金融市場で最近起きていた流動性逼迫の緩和にもつながると予想されている。ここ数週間にレポ金利が上昇し、資金調達コストの上昇が懸念されていた。

マッコーリー・グループのグローバルFX・金利ストラテジスト、ティエリー・ウィズマン氏はリポートで「政府機関閉鎖の終結で商業銀行における最近の流動性逼迫が和らぐ可能性がある。政府の流動性残高が取り崩され、それが民間の信用システムに再び流れ込むからだ」と指摘した。

<データ公開再開への期待>

投資家は政府機関閉鎖の開始以来続いていた「データの霧」が晴れることを強く望んでいる。経済の健全性を把握する上で投資家や米連邦準備理事会(FRB)が頼りにしている重要な統計の多くが発表されていなかったためだ。

9日に上院で妥協案がまとまり、週内にも政府閉鎖が終結する可能性が出てきたが、最終的な議会承認の時期はなお不透明だ。

オックスフォード・エコノミクスの米首席エコノミスト、ナンシー・ヴァンデン・ハウテン氏は、9月分の雇用統計などのデータは、政府機関閉鎖前に発表の準備がかなり進んでいたとみられるため、政府機関が再開すれば比較的早く公表されると予想する一方、その後の公表のペースは「はっきりしない」と述べた。「政府機関は失われたデータをすべて取り戻そうと最大限努力するはずだ。しかし一部のデータは発表が飛ばされたり、あるいは複数月分をまとめて公表する形になる可能性も否定できない」という。

パウエルFRB議長は10月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政府機関閉鎖によるデータの欠損が続けば12月会合で利下げの判断がより慎重になる可能性があると示唆した。

10日午後の時点で金利先物市場が織り込む12月FOMCで0.25%の利下げが決まる確率は63%。

オールスプリング・グローバル・インベストメンツのポートフォリオマネージャー、ジェイク・セルツ氏は「政府機関閉鎖が解決すれば、FRBは12月のFOMC前に雇用関連などの重要データを再び確認できるようになるはずだ」と話した。

しかし政府機関閉鎖の終了で株価がどの程度押し上げられるかは依然として不透明だ。

RBCキャピタル・マーケッツの米株式戦略責任者のロリ・カルヴァシナ氏は10日のメモに「政府機関閉鎖の解決が株式市場の全ての問題を解決するとは思えない。依然として過大なバリュエーション、企業業績見通しのピーク感、そして人工知能(AI)を巡る不安といった問題が残るからだ」と書いている。

ロイター
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