ニュース速報

ワールド

焦点:ロシア軍の性的暴行「組織的」か、司令官認識との証言も

2022年11月25日(金)13時14分

 ウクライナから避難してきた人々が滞在したポーランド・ピアセチュノのホステルを案内する婦人科医のAgnieszka Kurczuk氏。9月撮影(2022年 ロイター/Joanna Plucinska)

[キーウ 23日 ロイター] - ウクライナ当局が進める戦争犯罪捜査を支援する国際犯罪弁護士によると、ロシア軍司令官らがウクライナで兵士による性的暴行を認識し、時には奨励や命令さえしていたことを示す証拠が見つかっている。

英弁護士のウェイン・ジョーダッシュ氏はロイターに対し、最も捜査が進んでいる首都キーウ周辺の地域では、一部の性的暴行にロシア軍の一定レベルの組織が関与していると話した。「組織的なレベルで計画されていたことを物語っている」という。

ジョーダッシュ氏は、ウクライナに法的専門知識を提供する西側チームの一員。最近ウクライナが奪取した北東部や南部での捜査はまだ初期段階にあるため、こうした慣行がどれほど広がっていたかについて結論を出すのはまだ早いと同氏は話した。ただ、これまで発覚したパターンを見る限り、長期間にわたって占領されていた地域では、性的暴行が「もっと頻繁に行われていたかもしれない」と述べた。証拠は示していない。

ロイターは、被害を受けた可能性がある人たちに協力している法執行機関の関係者、医師、弁護士など20人余りと、強姦された可能性がある人物1人、さらに別の被害者の家族らに話を聞いた。

それによると、ウクライナのさまざまな場所でロシア軍が性的暴行を行った疑いがある。家族に暴行の様子を見るよう命じたり、複数の兵士が関わったり、銃口を向けて暴行したケースも多数あった。

ロイターが独自に証言の裏付けを取ることはできなかった。国連に委託された捜査組織が先月公表した報告書にも、家族が強姦を目撃したなどの事例が記録されている。報告書によると、被害者の年齢は4歳から80歳以上に及んだ。

ウクライナ北部チェルニヒウの地裁判決によると、ロシアの第80戦車連隊の兵士は3月、同地域で少女に繰り返し性的暴行を加え、家族を殺すと脅した。

ジュネーブ諸条約は、強姦は戦争犯罪に該当し得ると定めている。また大々的、もしくは組織的な性的暴行であれば、より重いとされる「人道に対する罪」と見なされる可能性もあると、法律の専門家は話している。

ロイターはロシア大統領府に対し、司令官が認識していたか、あるいは組織的だったかを含め、同国軍が性的暴行を働いた可能性について質問したところ、これを否定した。詳細な質問は国防省に問い合わせるよう指示されたが、同省から返答はない。

ウクライナ検察総長の事務所は、ロシアのウクライナに対する戦争は「ウクライナ人を絶滅させるのが狙い」であり、性的暴行は「恐怖状態を敷き、ウクライナ国民の間に苦しみと恐れを引き起こすことを意図した」ものだとコメントした。

プラミラ・パッテン国連事務総長特別代表(紛争下の性的暴力担当)はロイターに対し、家族の前での強姦や集団強姦、裸の強要などの証言に触れ、「性的暴行が戦争の武器として使われていた形跡がある」と述べた。

<白い敷物>

ウクライナは、ロシア軍兵士による数万件の戦争犯罪容疑を捜査中としており、性的暴行はその一部にすぎない。今回の戦争に関しては、国際刑事裁判所(ICC)など複数の主体が戦争犯罪捜査を行っており、ウクライナによる捜査がその中心を成している。

ICCの顧問でワシントン大学研究准教授のキム・シュイ・シーリンガー氏は、性的暴行が計画的なものだったことを示す証拠が見つかれば、組織的攻撃の一部だった可能性や、特定レベルの司令官が承知していた可能性が示されると言う。

キーウ近郊の村に住む女性ビクトリアさん(42)はロイターに対し、3月にロシア軍部隊が到着した直後、ある兵士から白い敷物を家の外に吊すよう命じられたと話した。兵士はその夜、他のロシア人2人と一緒に彼女の家に戻ってきたという。

そのうち1人がビクトリアさんに対し、兵士2人は酔っぱらい、楽しみたがっていると告げたという。その人物は兵士らよりずっと年上で、兵士らの呼び方からも司令官だったと考えればつじつまが合うと彼女は話した。

ビクトリアさんによると、兵士2人は隣家に彼女を連れて行き、その家にいた女性とともに近くの家まで連行された。妻であるその女性を守ろうとした男性は、兵士の1人に射殺された。ビクトリアさんは強姦され、彼女と女性の家族によると、その女性も強姦された。

家族によると、女性はウクライナから脱出しており、ロイターは連絡を取ることができなかった。

ロイターが7月に村を訪れた際、男性が射殺されたという場所には飛び散った血が見て取れた。この事件の後、ビクトリアさんは泣くのを抑えきれなくなり、今でも大きな物音がするとびくびくするという。

ポーランドの婦人科医、Agnieszka Kurczuk氏によると、同氏が世話をするウクライナ東部からの難民女性は、ロシア兵が村の女性らに白いベッドシートかタオルを吊すよう告げた後、9歳の娘がいるそばで強姦されたと話したという。

ロイターは、こうした目印と強姦容疑に直接的な関係があるかどうか確認できなかった。

<被害者はさらに多い可能性>

ロイターや国連の調査組織が集めた証言により、強姦と性的暴行の疑いはロシアがウクライナに侵攻した2月24日の直後から浮上していた。

春にウクライナから脱出してきた女性7人の世話をしているポーランドの婦人科医Rafal Kuzlik氏と、心的外傷が専門の心理学者である妻のIwona Kuzlik氏はロイターに対し、彼女らからロシア兵に強姦された話を聞いたと語った。

ウクライナの弁護士Larysa Denysenko氏は強姦被害者とされる9人の弁護をしており、うち7人は複数のロシア兵が関わったと主張している。一部は家族の前で殴られたり強姦されたりしたと供述した。

ウクライナ検事総長の事務所は、ロシア兵による女性、子ども、男性に対する性的暴行に関し、数十件の刑事訴訟を始めたと明かした。

ウクライナ当局やその他の専門家は、国の一部が依然占領されている上、被害者は往々にして被害を申し出ないため、その数は現在把握しているよりずっと多い可能性があると述べている。

国連人権理事会の独立調査委員会が9月に発表した報告書では、記録された数十件の性的暴行容疑の大半はロシア軍メンバーによるもので、2件はウクライナの軍か法執行機関の関係者によるものだった。

(Joanna Plucinska記者、Anthony Deutsch記者、Stefaniia Bern記者)

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米イラン、イスラマバード会談決裂後も対話の余地残す

ビジネス

マクドナルド、米国で新ドリンクを今月導入 クラフト

ワールド

米政権、移民判事をさらに解雇 親パレスチナ学生送還

ビジネス

豪消費者信頼感指数、4月は2年超ぶり低水準 中東紛
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ「EV撤退」が示す、日本が失った力の正体
  • 2
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目のやり場に困る」姿にネット騒然
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 5
    トランプがまた暴走?「イラン海上封鎖」の勝算
  • 6
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    「違法レベル...」ゼンデイヤの「完全に透けて見える…
  • 10
    BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音楽市場で…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中