ニュース速報

ワールド

ベラルーシ大統領6選、反政権派は結果認めず抗議デモ続く

2020年08月11日(火)08時41分

 9日に行われたベラルーシ大統領選挙は、現職のルカシェンコ大統領の勝利が確実となった。ミンスクで代表撮影(2020年 ロイター)

[ミンスク 10日 ロイター] - 9日に投票が行われたベラルーシ大統領選挙は、現職のルカシェンコ氏が80%を得票して6選を決めた。これに対し、反政権側は投票に不正があったとして選挙結果の受け入れを拒否。首都ミンスクなどで前日に続き抗議活動が広がり、警官隊と衝突した。

元英語教師で数週間前に主要な対抗馬に浮上したスベトラーナ・チハノフスカヤ氏の得票率は約10%だった。

ロイターの目撃者によると、ミンスクのデモでは警察が参加者を警棒で殴るなどし、数十人が拘束された。警察は道路も封鎖している。RIA通信は、ジャーナリスト1人が脚をゴム弾で撃たれて病院に運ばれたと報じた。現地メディアによると、他の都市でもデモ隊と警察の衝突が起きているという。

市民の抗議活動は、9日の投票締め切り後にも発生。警察の排除措置により、少なくとも1人が死亡、数十人が負傷した。

チハノフスカヤ氏の所在を巡っても懸念が浮上している。リトアニアのリンケビチュウ外相はツイッターに「数時間にわたりチハノフスカヤ氏と連絡を取ろうとしている。同氏の側近にも居場所が分からない。安否を非常に憂慮している」と投稿した。

チハノフスカヤ氏はこれより先、自分が勝者だと考えていると記者団に話し、投票結果が不正に操作されたと述べていた。

海外の選挙監視団は1995年以来、ベラルーシの選挙が自由で公正であるとは認めておらず、今回も選挙前にルカシェンコ氏の対抗馬が拘束されたり、大統領に反対の声を上げた人物への捜査が行われるなどした。

反政権側は当局と協議を行う用意があると表明したが、ルカシェンコ氏は応じる姿勢を示していない。

ルカシェンコ氏は1994年から大統領の座にあるが、経済政策や人権問題、新型コロナウイルスへの対応で市民から批判の声が上がっており、前途は多難だ。

しかし、同氏は退陣しない意向を示唆。ベルタ通信によると「適切な対応を取る。国の分断は容認しない」と述べた。

また、政権転覆を狙う外国勢力がデモ隊を操作し、暴力をあおっていると主張した上で、そうした試みは容認しないと表明。「革命は起きない」と改めて強調した。

今回の大統領選はロシアも注視。ベラルーシはロシアから西側諸国への原油輸出の中継地であるほか、北大西洋条約機構(NATO)諸国との緩衝国とされてきた。プーチン大統領はルカシェンコ氏に再選の祝電を送り、関係深化を呼び掛けた。

ドイツは欧州連合(EU)に対し、ベラルーシへの制裁について協議を呼び掛けた。

EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)とバルヘリ欧州委員(近隣・拡大政策担当)は「平和的な抗議活動に対する国家の不相応で容認できない暴力」によって選挙が損なわれたとする共同声明を発表。暴力を非難し、拘束された全員の即時釈放を求めると表明した。

ポンペオ米国務長官も10日、選挙は「自由で公正ではなかった」とし、「デモ参加者に対する暴力や反政権側支持者の拘束に加え、インターネットを遮断して選挙やデモに関する市民の情報共有を阻止する措置を強く非難する」と表明した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

SBG「ビジョン・ファンド」、2割レイオフへ AI

ビジネス

三井住友FG、米ジェフリーズへ追加出資で最終調整=

ワールド

EU、ロシア産LNGの輸入禁止前倒し案を協議

ワールド

米最高裁、トランプ関税巡る訴訟で11月5日に口頭弁
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中