ニュース速報

ワールド

米中通商合意、米USTR代表「完全に成立」 中国は慎重姿勢

2019年12月16日(月)19時24分

 12月15日、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は米中の「第1段階」の通商合意により米国の対中輸出は今後2年間に2倍近くに拡大すると述べ、合意文書の翻訳や修正が必要なものの、合意は「完全に成立」したとの見解を示した。6月撮影(2019年 ロイター/Leah Millis)

[ワシントン/北京 16日 ロイター] - ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は15日、米中の「第1段階」の通商合意により米国の対中輸出は今後2年間に2倍近くに拡大すると述べ、合意文書の翻訳や修正が必要なものの、合意は「完全に成立」したとの見解を示した。CBSの報道番組「フェース・ザ・ネーション」で語った。

米中高官が正式に合意文書に署名する日程は、まだ未定という。

米中両政府は13日、「第1段階」の通商合意に至った。米国は対中関税の一部を引き下げ、中国は今後2年間に米農産物、工業製品、エネルギー製品の購入を約2000億ドル拡大する。

中国は米知的財産権の保護強化や、中国企業への技術移転の強要抑制、金融サービス市場の開放、為替操作の回避なども約束した。

ライトハイザー氏は、中国による米農産物購入は今後2年間に年400億─500億ドルに拡大する見通しだと述べた。両国の関税合戦は2018年7月に始まっており、それ以前で直近の中国による米農産物購入の通年実績は、2017年に約240億ドルだった。

<関税引き下げ提案>

米国は、15日に予定していた1600億ドル相当の中国製品に対する関税発動を見送る。同時に1200億ドル相当の製品に対する関税を従来の15%から7.5%に引き下げる。

USTRと米財務省は、米交渉担当官が3600億ドル相当の製品全ての関税を半分に引き下げる提案を行ったとの報道について「完全に誤っている」と指摘。共同声明で「米国がそのような提案を中国に示したことはない」とした。

今回の通商合意では2500億ドル相当の中国製品への25%の関税が維持され、13日の米株市場の上値は抑制された。

ライトハイザー氏は、通商合意の成功は中国当局者の決定に左右されると発言。「最終的にこの合意が完全に機能するかどうかは米国ではなく、中国で誰が決定を下すかにかかっている。強硬派が決定を下すのと、われわれが望む改革派による決定では別の結果がもたらされる」と語った。

また、合意は米中間の問題全てを解決するものではないとし、政府系企業が独占する中国の経済システムと民間セクターが主導する米国のシステムの融合には、何年もかかるとの見解を示した。

<中国は慎重姿勢>

一部の中国政府当局者は、慎重な姿勢を示している。

北京のある関係筋は「段階的な合意だ。貿易紛争がすべて解決するわけではない」とし、調印と履行が重要な優先課題になると指摘した。

複数の中国当局者によると、合意文書の文言が依然としてデリケートな問題となっており、文言を巡って再び関係が緊張することがないよう配慮が必要な状況という。

中国人民大学教授で、国務院(内閣に相当)顧問を務める時殷弘氏は北京で開催されたフォーラムで、大豆など米国から輸入する一部の農産物は、中国の国内需要をはるかに上回ると指摘。

「トランプ大統領は、今回もしくは次回、大量のエネルギーや工業品を米国から輸入するよう中国に迫るだろう」とし「トランプ氏とライトハイザー氏はとても嬉しそうだが、中国政府は事実を報告しただけで、喜んではいない」と述べた。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとウクライナ、双方が夜間に攻撃 エネインフラ

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長を1月第1週までに指名の

ワールド

オラクル会長、404億ドルの保証提供 パラマウント

ビジネス

ヘッジファンド、米医療サービス事業者など売り越し=
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中