ニュース速報

ワールド

焦点:テキサス油田ブームのジレンマ、生産急増でコスト増大

2018年10月07日(日)08時16分

 10月2日、米テキサス州パーミアン盆地は米国最大の油田を抱え、シェールガス産業の中心地だ。生産量は過去最高を更新し続けているが、生産コストも上昇し、企業は利益を生み出せずにやむなく投資先の振り替えも迫られている。テキサスで7月撮影(2018年 ロイター/Liz Hampton)

[ミッドランド(米テキサス州) 2日 ロイター] - 米テキサス州パーミアン盆地は米国最大の油田を抱え、シェールガス産業の中心地だ。生産量は過去最高を更新し続けているが、生産コストも上昇し、企業は利益を生み出せずにやむなく投資先の振り替えも迫られている。

パーミアン盆地での過去3年間の生産量は、日量150万バレルから343万バレルに急増した。一方で現地の原油価格は低下し、8月には1バレル当たり17ドルも米国産原油の水準を下回った。輸送コストが上昇する中で、企業側は割安な価格で販売してコストを補う状況に直面している。

産油会社アプローチ・リソーシズのロス・クラフト最高経営責任者(CEO)は「われわれ自身が、自分たちに最悪の敵となっている。油田を掘削して原油を汲み上げる速度が速いため、市場のニーズを上回ってしまう」と述べ、生産者のペースにインフラが追い付くにはもう少し時間がかかると説明した。

アプローチ社は油田掘削はするが、原油を生産するための水圧破砕法(フラッキング)には手を付けないままにしている。価格が上昇して利益が確保できる状態が到来するまで待つためで、他のシェール生産業者も同様の状態だ。

米エネルギー省によると、パーミアン盆地で手付かずとなっている油田は8月時点で前年同月比80%増の3630カ所に増えた。米国でのそれ以外の地域では、10%増にとどまっている。

一部の企業は、パーミアン盆地での操業縮小にも踏み切った。コノコフィリップスとカリッツォ・オイル&ガスは生産装置を他の油田に移し、コノコは別の油田の操業を止めた。ノーブル・エナジーもコロラド州に一部生産装置を移すとしている。

掘削業者グローバル・ドリリング・パートナーズは掘削予定の油田を7カ所から2カ所に減らし、操業開始時期も7月から12月に延期した。パイプライン設備不足が要因で、各企業はテキサスの他の油田やコロラド、オクラホマでの生産拡大を見込んでいるという。

原油価格低下に伴い、シェール生産業者の株価も打撃を受けている。パーミアン盆地でしか操業していないパースレー・エナジーは、第2四半期の利益が前年同期比8倍増、産油量は57%増と業績は好調だ。

ただ、投資額を17%増やし、生産規模をさらに5%上積みするとの計画を発表したため、投資家の懸念を呼び、株価は8月7日の決算発表以降、約8%下落した。

一方、パイプラインの使用契約がない中小規模の生産業者の状況はもっと悲惨だ。

輸送にトラックや鉄道を使う必要があるためで、湾岸地域にある製油所や輸出拠点まで原油を運ぶトラック輸送費はバレル当たり15─25ドル、鉄道では8─12ドルかかり、パイプラインの4ドル以下に比べてコストがかさむ。高速道路や鉄道路線での渋滞も引き起こし、ガソリンなどの不足につながる恐れもある。産油業者は長期契約を避ける傾向があるので、鉄道会社が輸送能力を拡大する可能性も低いという。

結局、目立って増えているのはコストだ。プリファード・サンズ社のマイケル・オニール最高経営責任者(CEO)は、同社がテキサス州の従業員に対し他の地域より30%多い賃金を支払っており、次の操業はオクラホマ州に移したと明らかにした。

(Liz Hampton, Devika Krishna Kumar and Jarrett Renshaw記者)

(※原文記事など関連情報は画面右側にある「関連コンテンツ」メニューからご覧ください)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

韓国クーパン、顧客情報大量流出で11.8億ドルの補

ワールド

尹前大統領の妻、金品見返りに国政介入 韓国特別検が

ビジネス

日経平均は反落、需給面での売りが重し 次第にもみ合

ビジネス

午後3時のドルは156円前半、年末年始の円先安観も
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中