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アングル:英EU離脱派、底流に「トランプ主義」と共通する価値観

2016年06月22日(水)17時08分

 6月21日、米大統領選の共和党候補指名を確実にしたドナルド・ トランプ氏の躍進ぶりを目の当たりにした米有権者は、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を主張する陣営に、不気味なほどの既視感を覚えるかもしれない。写真はロンドンで3月撮影(2016年 ロイター/Toby Melville)

[ワシントン 21日 ロイター] - 米大統領選の共和党候補指名を確実にしたドナルド・ トランプ氏の躍進ぶりを目の当たりにした米有権者は、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を主張する陣営に、不気味なほどの既視感を覚えるかもしれない。

そこにあるのは、ナショナリズム、美化されたノスタルジア(懐古趣味)、エリートへの不信感、移民が犯罪を持ち込み、雇用を奪うという警戒心だ。これを「トランプ抜きのトランプ主義」とでも呼ぼう。

23日の国民投票で仮にEU離脱を選択すれば、英国は独自に貿易協定を交渉し、入国する移民を制限することなどが可能となる。

今週訪英するトランプ氏は離脱支持を表明。英サンデー・タイムズ紙のインタビューで「個人的には、官僚主義が大きく後退するといった多くの理由から、離脱のほうがいいと思う」と語った。

<共通するテーマ>

トランプ氏は選挙キャンペーンで、メキシコからの不法移民や中東からの難民がもたらす危険を繰り返し警告し、メキシコとの国境には壁を築くことを提案した。英EU離脱問題でもシリア難民は議論の的であり、離脱派は中東などからの経済移民の流入を阻止すべきだと訴える。

ミネソタ大のウェンディ・ラーン政治科学教授は「大西洋の両岸に共通するテーマがある。国家の主体性が脅かされる危機感、反グローバル主義、ノスタルジア、エリートの無責任さといった問題だ」

トランプ氏や英EU離脱が体現する保守的ポピュリズムの新しい潮流は、いまやスウェーデンやフランス、ポーランドなど他の欧州諸国にも波及している。

離脱派の外国人嫌いは批判の対象となっている。反EUを掲げる英国独立党(UKIP)のファラージュ党首は先週、シリア難民が押し寄せる写真と「限界点だ」という文言を入れたポスターを公表し、各方面から非難を浴びた。

<距離を置く主流派>

ただ、ブレグジット陣営の主流派は、ファラージュ党首のような人物とは距離を置いている。共和党候補指名を争ったジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事や2012年の共和党候補だったミット・ロムニー氏ら同党の重鎮も、イスラム教徒の米入国禁止など過激な主張を繰り返すトランプ氏と一線を画すよう努めてきた。

トランプ氏はフロリダ州オーランドで起きた銃乱射事件の後、「われわれは自由で開放的な社会で暮らしたい。それならば、国境を管理する必要がある」と発言した。

政治や金融のエリート層への嫌悪感はトランプ人気の追い風となったが、これもEU離脱派に共通する感情だ。

イングランド南東部で離脱派キャンペーンを立ち上げたジャスティン・ベルハウスさんは、トランプ氏を「ばかげている」としつつも、英国の労働者のチャンスを増やすために移民抑制は必要だと主張する。米国人労働者のための雇用確保というのはトランプが好むテーマだ。

ロンドンのシンクタンク、欧州改革センター(CER)のチャールズ・グラント所長は、ブレグジット支持層はトランプ氏の支持層と酷似していると指摘。年齢が高く、白人で、経済的に豊かでなく、都市部以外に住んでいる。

また、トランプ氏のスローガン「米国を再び偉大にする」と同様、ブレグジット支持層は過ぎ去った時代を懐かしんでいる。グラント氏は「英国に白人が多く、イングランドがより安全だった時代を取り戻りたいと感じる人々が一部にいる」と指摘した。

(記者:James Oliphant 、Emily Stephenson 翻訳:長谷川晶子 編集:加藤京子)

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