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アングル:「AIよ、うちの商品に注目して」、変わる米年末商戦の広告戦略

2025年11月29日(土)11時11分

People look at their smartphones in lower Manhattan in New York City, U.S., May 8, 2019. REUTERS/Mike Segar

Arriana McLymore

[ニューヨーク 26日 ロイター] - 米国の年末商戦で、大手小売事業者はこれまで、消費者の注目を集めようと何百万ドルもの資金を投じてきた。しかし今は、状況に応じて自律的な判断・行動ができる「人工知能(AI)エージェント」に注目してもらうことに躍起となっている。

今年の米年末商戦ではオンライン販売の売上高が2530億ドルと見込まれている。その大半は、ウェブサイトの訪問や検索エンジン広告に多額の資金を費やす企業が有利になる従来型のオンライン検索の仕組みからもたらされるとみられる。

だが消費者がお薦めギフトについてAIに助言を求める傾向が強まる中で、買い物支援ツールの新たな選択肢として浮上してきたのがオープンAIの「チャットGPT」やグーグルの「ジェミニ」といった生成AIだ。これらは商品説明の提供や、価格比較、大規模言語モデル内の直接購入を可能にしてくれる。

生成エンジン最適化プラットフォーム、エバーチューン・ドット・aiのブライアン・ステムペック最高経営責任者(CEO)は「以前は新しいブログへの投稿や記事の公開が毎月3-4本だったブランドが、今では100本ないし200本を目指している」と語る。

同社は顧客のウェブサイトがAI大規模言語モデルに発見されやすくするための支援に従事している。ステムペック氏によると、アパレルや靴のブランド企業を含む顧客から毎月3000ドル前後の料金を受け取っているという。

これまで小売事業者は、ユーザーが検索したフレーズや以前にクリックしたリンクに基づき、グーグルやメタに広告を掲載してきた。

現段階では主要な生成AIツールに広告を直接掲載することはできない。企業は、ブランドブログへの投稿頻度を増やしたり、オンライン掲示板レディットに自社製品を書き込んだりするなどの新しい手段を模索しつつある。

こうした中、大手小売事業者は、買い物客に見えない「AIスクレイパー」向け専用のウェブサイトを構築している。これはインターネット上の情報を収集する自動データ摘出ツールに読み取られることを目的としており、AIスクレイパーはその情報をチャットGPTやジェミニのようなプラットフォームへ供給して、これらのプラットフォームがギフトなどの商品に関する提案をするという流れだ。

<AI経由は高い購買意欲>

生成AIプラットフォームから小売サイトへのトラフィックは現段階では全体の活動量に比べるとごくわずかにとどまっている。センサー・タワーによると、10月にチャットGPTからアマゾン・ドット・コム、ウォルマート、イーベイへの誘導は、各サイトの総トラフィックの1%未満だった。

イーベイは、AI経由のトラフィックは全体の中で小さな割合に過ぎないものの、AIエージェントを通じてリンクを発見した買い物客は高い購買意欲を持ってマーケットプレイスを訪れていると説明した。

こうした中で企業は、AIツールに商機を見出している。ベッドリネンを手がけるブルックリネンのレイチェル・レビー最高執行責任者(COO)は、ソーシャルメディアのインフルエンサーらに対価を払い、自社のタオルや掛け布団の商品に関してフェイスブック、ユーチューブ、TikTokといったプラットフォームで言及してくれるよう依頼していると明かした。AIスクレイパーが、これらの商品レビュー投稿のテキストや音声から情報を収集するからだ。

ブルックリネンはさらに、米紙ニューヨーク・タイムズ傘下の商品レビュー情報サイト「ワイヤカッター」などで自社の199ドルの掛け布団がおすすめ商品にリストアップされる取り組みもしている。リストアップされれば、AIエージェントの回答に登場する可能性が高まるからだ。

南部フロリダ州マイアミに拠点を置くヘアケア企業R+Coは、顧客が同社の「ルーファス」(アマゾンストアとインターネッ上の情報を学習した生成AIを搭載した買い物支援ツール)に質問している内容に基づき、アマゾンの音声アシスタント「アレクサ」上で広告を購入している、とダン・ランガー社長は語った。

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