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インタビュー:欧米金融不安、日本に及ぶ可能性高くない=森田前金融国際審議官

3月27日、前金融庁・金融国際審議官の森田宗男氏は、ロイターのインタビューに応じ、足元で高まっている欧米の金融不安が現時点で日本の金融セクターに波及する可能性は「あまり高くない」と述べた。写真はイメージ。2017年6月撮影(2023年 ロイター/Thomas White)
[東京 27日 ロイター] - 前金融庁・金融国際審議官の森田宗男氏は27日、ロイターのインタビューに応じ、足元で高まっている欧米の金融不安が現時点で日本の金融セクターに波及する可能性は「あまり高くない」と述べた。ただ、日本のメガバンクは緊張感を持った経営が必要だとし、ドルなど外貨流動性の管理や流動性の低い商品のリスク管理を徹底すべきだとの見解を示した。
<リーマンと違う>
2008年のリーマン・ショック時に金融庁監督局証券課長で、09年7月にメガバンクなどを所管する銀行第一課長に転じ、危機対応に当たった森田氏は、当時はサブプライムローン関連商品やCDO(債務担保証券)、店頭デリバティブなど、金融商品が問題の根本にあったが、今回は個別金融機関のビジネスモデルが問題になったと指摘した。
多くの金融機関がハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルから顧客重視のビジネスや富裕層向けの資産管理などにシフトしていく中、クレディ・スイスはハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルを改めなかった「筆頭格」に当たり、「こういう形で1つの結論が出たのは非常に残念だ」と語った。
<メガバンク、背筋伸ばした経営必要>
森田氏は欧米、日本ともに「若干神経質にならざるを得ない面がないわけではないが、総体として金融セクターは安定している」との見方を示した。
ただ、UBSによるクレディ・スイスの買収を機にカウンターパーティー・リスクへの警戒感が上がることが想定されるため、日本のメガバンクは「背筋を伸ばした経営をしなければいけない」と指摘。米ドルやその他の外貨の流動性確保の再点検、調達コスト急騰時の対応、流動性が低い金融資産のリスク管理などに十分目配りすべきだとした。
地方銀行については、一般的に預金の粘着性が高く、米シリコンバレー銀行のような形で取り付けが起きることは「想定しがたい」という。日本の預金保険制度は一般的なリテールの小口預金に加えて、企業が従業員や取引先への支払いに充てる大口の決済性預金について、金利を付けることを禁止した上で全額保護する仕組みになっていることも取り付けを起こしにくくしていると説明した。
国内基準行の場合、保有有価証券の評価損は自己資本比率に反映しなくてもいいが、森田氏は「リスクがなくなるわけではない」と指摘。「常に先手先手でリスク管理上の対応をしていくことが金融システムを守る上で非常に大事なことだ」と述べた。
金融不安が高まった場合、「当局の根本的なテーマはモラルハザードをどうするか」だと強調。日銀など6つの主要中銀は20日、米ドル流動性供給の拡充を打ち出したが「提供されて当たり前だと思い出すと、モラルハザードの問題になる」と警鐘を鳴らした。
森田氏は1985年に旧大蔵省入省。金融庁では総合政策局長を経て2020年7月に金融国際審議官に就任した。21年7月に退官し、22年1月にアンダーソン・毛利・友常法律事務所の顧問に就いた。
(和田崇彦、木原麗花)