ニュース速報

ビジネス

アングル:米株回復は債券次第、利上げ終了まで動揺続く見方も

2022年10月03日(月)11時00分

 米国の株価と債券価格は今年に入って急落している。写真はニューヨーク証券取引所前で2021年1月撮影(2022年 ロイター/Mike Segar)

[ニューヨーク 30日 ロイター] - 米国の株価と債券価格は今年に入って急落している。投資家は債券が急落を主導していると考えており、債券市場の動揺が収まるまでは株価回復はないとの見方を示している。

米株と債券は今年、第3・四半期末までにともに大幅な売りを浴びた。S&P総合500種指数は年初来で約25%下落し、ICE ・BofA米国債指数は約13%下げた。BoFAグローバル・リサーチによると、2資産の同時安としては1938年以来で最大だという。

ただ多くの投資家は、こうした動きは債券が主導していると考えている。市場参加者が米連邦準備理事会(FRB)による想定以上の金融引き締めを見越してポートフォリオを再調整する中、利回りが急上昇し、株式のバリュエーションが大幅に低下している。

S&P500採用銘柄の予想株価収益率(PER)は、4月の20倍から現時点で16.1倍に低下した。この間、ベンチマークの米10年債利回りは140ベーシスポイント急上昇している。

野村のクロスアセット戦略担当マネジングディレクター、チャーリー・マケリゴット氏は「金利は世界のあらゆる資産の中核で、ターミナルレート(金利の最終到達点)がどこに落ち着くかという不確実性がクリアになるまで、株式にプラスの再調整が起こることはない」と話す。

米国債のボラティリティーは2022年に拡大し、今週の国債利回り急変動を受けてICE・BofAML米国債券市場オプションボラティリティー推定指数は20年3月以来の高水準となった。これとは対照的に、投資家の不安心理の度合いを示し「恐怖指数」の異名を持つシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は、今年のピークを下回っている。

ソシエテ・ジェネラル(ソジェン)のアナリストは「われわれは、金利変動がクロスアセット・ボラティリティーの主要なけん引役だと考えている。そのわれわれでさえ、このところの金利変動を信じられない思いで見続けている」としている。

多くの投資家は、FRBがインフレとの闘いに勝ち、最終的に金融引き締めを終了できるという証拠が出るまで、乱高下は続くと考えている。今のところ、市場の見通しはタカ派度を増している。

CMEのフェドウォッチによると、9月30日午後の時点で、FRBが11月2日の会合で75ベーシスポイント(bp)の利上げを決める確率は57%で、1カ月前の0%から上昇した。市場は、金利が23年7月に4.5%でピークに達すると見ている。1カ月前には4%と予想されていた。

10月7日発表の米雇用統計は、FRBの利上げが成長に影響を与え始めているかどうかを投資家に示すことになる。投資家はまた、ドル高とサプライチェーンの混乱が企業の収益にどの程度影響するかを見極めるため、10月に本格化する決算発表にも注目している。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英仏海峡トンネルで電力障害、ユーロスター運休 年末

ビジネス

WBD、パラマウントの敵対的買収案拒否する見通し=

ワールド

サウジ、イエメン南部の港を空爆 UAE部隊撤収を表

ビジネス

米12月失業率4.6%、11月公式データから横ばい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中