ニュース速報

ビジネス

ECB、インフレ戦略で見解に溝 9月までの合意に期待=関係筋

2021年06月22日(火)20時09分

複数の関係筋によると、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーは新たなインフレ戦略でまだ合意に達していないものの、9月の理事会までの合意成立に期待を寄せている。ラガルド総裁、2月の代表撮影。(2021年 ロイター)

[フランクフルト 22日 ロイター] - 複数の関係筋によると、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーは新たなインフレ戦略でまだ合意に達していないものの、9月の理事会までの合意成立に期待を寄せている。

関係筋によると、ECB理事会メンバーは、18-20日に会合を開き、一部の副次的な問題で合意。具体的には、政策決定の際に環境問題を考慮に入れることや、所有者が住んでいる住宅の費用をインフレ指標に追加することを決めた。

ただ、物価安定の定義と物価安定の達成方法という重要な問題については、まだ見解の相違が残っているという。

ある関係筋によると、新たなインフレ目標を2%に設定し、インフレ率がこの目標をオーバーシュートすることを容認できるという点では総意が成立している。

ただ、この点をどのような文言で説明するのか、また容認するオーバーシュートの幅や期間について具体的にどこまで言及するのかを巡って、溝が残っているという。

理事会メンバーは、この問題を今後数週間かけて議論する見通し。今後数日でさまざまな草案が配布される見込みだという。

2人の関係筋によると、ECBは9月9日の理事会までに戦略をすべてまとめることに期待を寄せている。同日の理事会では、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の今後について決定する可能性がある。

ECB報道官はコメントを控えている。

ECBのラガルド総裁は20日、3日間の会合で「順調な進展」が得られたと発言。カジミール・スロバキア中銀総裁は「数週間以内に」戦略見直しを終えることを期待していると述べた。

<「対称的」「非対称的」>

関係筋によると、今回の戦略見直しでは、できる限り平易な言葉を用い、インフレ目標を巡って「対称的」「非対称的」といった専門用語の使用を控えることで理事会メンバーの合意が成立している。

また、フランス、ドイツ、オランダなどで不動産ブームが起きていることを踏まえ、所有者が住んでいる住居の費用についても考慮に入れることで合意した。

これにより、インフレ率がECBの目標や人々の実感に近づくとみられるが、実現には欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)や各国の統計局との協力が不可欠で、4-5年を要する作業になる見通しという。

気候政策についても、総意が成立しており、今後ECBと各国中銀のスタッフで構成する委員会で成文化する必要があるという。

関係筋によると、気候政策については、大まかな方向性を示す形となり、ECBの政策をどのように「よりグリーンにする」かを巡る具体策の詳細は後日まとめる可能性がある。

米連邦準備理事会(FRB)は昨年、政策の見直しを行い、平均で2%のインフレ率を目指す方針を示したが、すでに市場との対話で一部の問題が生じており、ECB理事会メンバーには受け入れられなかったという。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中