ニュース速報

ビジネス

焦点:「割安」な米銀行株の買い活発化、上昇は持続するか

2020年06月05日(金)18時19分

6月4日、米経済の持ち直しを見込む投資家が、割安な米銀行株の買いを活発化させている。ニューヨーク証券取引所で5月28日撮影(2020年 ロイター/Lucas Jackson)

[4日 ロイター] - 米経済の持ち直しを見込む投資家が、割安な米銀行株の買いを活発化させている。株価上昇が持続するためには、連邦準備理事会(FRB)のストレステスト(健全性審査)で好結果が確認された上で、貸し倒れ損失が一服することが必要だと一部市場関係者が警告しているにもかかわらずだ。

銀行は消費者や企業の支出に影響を受けやすいセクターで、株価は新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済悪化で痛手を受けた。しかしS&P銀行株指数<.SPXBK>は先週、2日間で15%の上昇を記録した後、6月に入っても10%近く値上がりしている。

3日には、同日発表された5月の民間雇用減少幅が予想より小さかったことで銀行株指数は5%、4日も米国債利回りの上昇につれてさらに1.8%上がった。

足元で成長株よりもバリュー株が好まれる地合いが復活したほか、大手行首脳から楽観的な発言が出てきたことも、銀行株にとって追い風だ。例えばJPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は、貸倒引当金の積み増しペースが第3・四半期と第4・四半期でピークアウトする可能性があるとの見通しを示した。

第2・四半期の銀行決算は厳しい数字になるだろう。また投資家は6月末に公表予定のストレステスト結果を首を長くして待っている。この結果次第で、株主に還元できる資本が決まるからだ。

ただポートフォリオマネジャーの中には、来年の利益改善を見越したポジション構築に動く向きも見られる。来年までには、景気悪化に伴う引当金の大半を積み終えられるとの想定に基づいている。

チェリー・レーン・インベストメンツのパートナー、リック・メックラー氏は「これからの1年は事態が良くなるとの明るい見方が存在する。また銀行は他のほぼ全てのセクターの後塵を拝してきたので、今になって追いつこうとしている」と述べた。

実際、S&P銀行株指数は最近の上昇を踏まえても、年初来の下落率が29%とS&P総合500種<.SPX>の3%強の下落よりずっと大きく、依然として年初来で最も出遅れているセクターの1つだ。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの米国株投資マネジャー、マイケル・クロニン氏は、ストレステスト後、FRBがより多くの資本を内部にとどめるよう求めた場合に配当が停止されかねないとの懸念が、株価を引き続き圧迫しているとの見方を示した。

新型コロナのパンデミック(大流行)に投資家がおびえていた2月に、銀行セクターの株価純資産倍率(PBR)が急低下し始め、4月には2009年の金融危機以降で最低となる0.72倍に沈んだ。その後0.81倍まで回復しているものの、過去平均の1.22倍に比べてまだ割安に見える。

マニュライフインベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ライアン・レンテル氏は「多くのマイナス要素は現在のバリュエーションに織り込まれており、だからこそ他の業種と比較して大きな上昇余地がある」と指摘する。

一方、アバディーン・スタンダードのクロニン氏によると、新型コロナ感染第2波とそれに伴う再ロックダウン(封鎖)が起きるか否かに左右される与信コストが重要で、この方向性を見極めたい考え。「ストレステストと与信(コスト)がある程度はっきりするまで、短期的には、株価が大幅に上がるのはかなり難しいだろう」という。

成長株<.IGX>からバリュー株<.IVX>への循環物色の持続性に疑問を投げ掛けるのは、キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズの調査責任者フレッド・キャノン氏だ。銀行利益が金利上昇に負う面があり、低金利がかなり長期化すると見込まれる以上、株価の上昇は限定的になると予想している。

(Sinéad Carew記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「プーチン氏を信頼せず」、勝利に米の

ワールド

イスラエルのソマリランド承認に安保理で懸念、ガザ住

ワールド

ロ、ウクライナで戦略的主導権 西側は認識すべき=ラ

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、米株安の流れ引き継ぐ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中