ニュース速報

ビジネス

緩和下の財政政策、景気刺激効果がより強力に=黒田日銀総裁

2019年12月26日(木)15時58分

 12月26日、日銀の黒田東彦総裁(写真)は、金融政策と財政政策との連携について「中央銀行が物価安定目標を実現するために金融緩和政策を推進している状況で、政府が財政政策を活用する場合には、相乗効果によって景気刺激効果はより強力なものになる」との認識を改めて示した。写真は19日撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 26日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は26日、日本経団連の審議員会で講演し、金融政策と財政政策との連携について「中央銀行が物価安定目標を実現するために金融緩和政策を推進している状況で、政府が財政政策を活用する場合には、相乗効果によって景気刺激効果はより強力なものになる」との認識を改めて示した。

政府が12月に閣議決定した経済対策についても「日銀が強力な金融緩和を推進するもとで、景気の拡大基調を維持するために大きな効果を持つ」と強調した。

ただ「最近の議論の中には、ポリシー・ミックスを、中央銀行による財政ファイナンスと混同しているものもみられる」と懸念も示し、「金融政策と財政政策との連携を考える際には、それぞれの役割分担を明確にすることが重要だ」と語った。

その点、政府と日銀が2013年1月に公表した「共同声明」は「この点を明確に意識して作成されている」とし、「政府と日銀が両者の役割を明確化したうえで、その実現に向けて、それぞれが自主性を持って取り組むという共同声明の枠組みは、極めて有効に機能している」と評価した。

<不確実性が幾分緩和>

来年の世界経済については「不確実性は大きいものの、来年半ばにかけて緩やかに成長率を高めていく」との見通しを示した。その理由として、1)米中通商交渉の進展など、世界経済を巡る不確実性が幾分緩和している、2)今年の世界経済の足を引っ張っていた、グローバルなITサイクルが持ち直してきている、3)各国のマクロ経済政策の効果──の3点を挙げた。

もっとも、米中通商交渉は対立点が残っているほか、新興国経済の不確実性や地政学的リスクなどにも注意が必要だとして「引き続き、下振れリスクが大きい」とも付け加えた。

日本経済については「内需は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、増加基調をたどる」と従来の見方を繰り返し、「これまでの世界経済の減速や消費税率引き上げ、自然災害の影響から、内需の増勢はいったん鈍化するものの、大きな落ち込みは回避されると見込んでいる」と語った。

黒田総裁は賃金と物価の循環についても言及。「企業収益が持続的に増加していくためには、賃金と物価の好循環が働き続けることが重要だ」と指摘する一方で、現状、「賃金上昇と物価上昇の好循環は、なお力強さに欠けている」と厳しい見方を示した。その背景については「デフレのもとで長期にわたり厳しい雇用環境を経験したことで、労使ともに賃金よりも長期的な雇用の安定を優先するという行動様式が定着し、賃金の上昇局面になっても、それが根強く残っていることがある」と説明した。

*内容を追加しました。

(志田義寧 編集:青山敦子、内田慎一 )

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中